空の産業革命に向けたロードマップを基に無人地帯での目視外飛行実証が開始されており、物流分野のみならず農業分野やインフラ点検、非常時などへの活用可能性が広がっている。目視外による長距離飛行の実現には、第三者上空通過や撮影画像のプライバシー対策に加え、機体性能向上や墜落災害リスクなど、課題が多い状況であり、安全性の確保と社会からの受容性をいかに高めるかが鍵である。

図_空のロードマップ2018_4c

 2018年12月20日に空の移動革命に向けた官民協議会が開催され、「空飛ぶクルマ」実現への議論が始まっている。2030年代には社会実装されるビジョンを掲げており、ドローンによる物流から人の移動革命まで夢は大きく広がり、低空域の有効活用が予想される。
 

物流、農業、インフラ点検などへの活用に期待高まる

 
 ドローン物流に関しては、空の産業革命に向けたロードマップにより、無人地帯での目視外飛行(補助者無し=レベル3)の実証が日本郵便などにより、昨年から開始された。2020年代前半の有人地帯での目視外飛行=レベル4を目標に、研究開発や福島ロボットテストフィールドなどでの実証準備が進められている。

 近年、ドローンは注目されているが、以前より航空機による農薬散布は広く行われていた。1980年代より、無線操縦ヘリコプターが導入され、2010年頃より、IMUやモーター、バッテリーなどの高性能化が進み、GNSSや地図のデジタル化が整備されることで、目視内でのドローン遠隔自動飛行による農業や空撮分野などでの活躍が目覚ましい。

 特に、画像やセンサーによる生育把握などでも活用可能であり、農業化学分野で世界トップシェアの独バイエルも、ドローンを意欲的に活用するデジタル農業で日本に参入する。

 高経年化が進むインフラ設備において、全国の橋梁点検や治水、電力設備などのインフラ維持管理費用が30年では2千億円規模を想定しており、より効率的な点検巡視のドローン活用に向けた研究開発や実証が進んでいる。東京電力グループにおいても、発電所などの点検や非常災害時での電力設備巡視などに一部活用している状況である。

 

目視外での自動飛行の管理が必要。墜落災害や頭上飛行への信頼も

図_目視外飛行_4c
 
 遠隔地でのドローン活用に当たっては、現状の単一箇所での作業者支援的な利用ではなく、複数箇所を効率的に巡回するなど、目視外にて人が介在しない自動飛行によるドローンの飛行管理や自律制御技術が不可欠である。

 その実現には第三者上空通過や画像のプライバシー対策に加え、墜落災害や有人機などとの衝突といった課題をクリアし、ドローンが頭上を飛行することについて、社会から信頼を得る必要がある。そのため、早急な研究開発や、実証、ルールの整備が求められている。

 例えば、ダウンバーストなどの風に弱いドローンが飛行する山間地の複雑な地形や高層建物周辺においては、乱流や風速風向の状況を十分に把握・予測する技術が必要であり、合わせて機体の耐風性能向上や飛行管理システム側での対応が考えられる。なお、確実な目視外での遠隔制御には、上空での広域な通信技術や物体認識・追従技術も必要である。

 目視外による長時間飛行で多様なニーズを実現するためには、バッテリーの性能向上に加え、機体の防水性と充電自動化が両立可能なワイヤレス充電技術が求められる。

 これらの技術と共に、産業ドローン社会実装の基本として、墜落リスクを想定した安全支援の技術開発は特に重要である。

【用語解説】
◆IMU(慣性計測装置)
3軸の加速度と角速度を検出して姿勢角を算出する装置。磁気センサーをさらに付加すると機首方位をもとに姿勢方位が演算できる。

◆GNSS(全地球航法衛星システム)
米国のGPSや欧州のGalileo、ロシアのGLONASS、日本のQZSS(準天頂衛星)などの衛星測位システムの総称。

◆ダウンバースト
強い下降気流により地面に衝突した際に四方に広がる突風。

電気新聞2019年3月4日
  

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