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 今回は、実際のモノである工業製品が、どのようにIoT化されていきそうか見てみよう。今までのモノ、例えば、エアコンとか、ガラス窓とか、ドアの鍵などは、それそのものが単体で設置され機能していたし、当面も多くはそうだろう。しかし、一部の商品はインターネットにつながり始めており、これらは一体何を目指しているのだろうか。
 
 

ジェットエンジンなどで進むコネクティッド化

図_IoTによるビジネスモデルの変革例_4c
 
 こんな話を聞いたことがあるかもしれない。ジェット機のエンジンや、輸送業務用タイヤなどは、メーカーが各種センサーでその状態を把握しており、モノの稼働状態や稼働実績を常に管理している。そして、メーカーは、実際に故障が発生する前にメンテナンスを行ったり、ユーザーがまだ使用できるタイヤを交換してしまうような無駄を防ぐことを手伝って、結果としてそのモノの品質やコストパフォーマンスを素晴らしいものにしている、というものである。

 これを磨き上げたビジネスモデルとして、もはや単にジェットエンジンやタイヤというモノを売るのではなく、ジェットエンジンなら「予防保全をも見越した、運航計画立案サービスを提供する」とか、タイヤでは「燃費も同時に管理して、燃費低減のアドバイスサービスを提供する」事業が確立されようとしている。まさしく、ビジネスモデルの変革である。
 
 

ドア鍵もサービスに。解錠のパスワードをスマホで

 
 エアコンとか、ガラス窓とか、ドアの鍵などのコンシューマー商品でも、そのような動きが起き始めている。ドアの鍵の例を紹介しよう。スマートロックと呼ばれる一連の商品があり、解錠のためのパスワードをスマホで受け渡すなどができるため、民泊需要などが期待されている。

図_売り切りから月額サービスへ_4c

 仕組みはこうだ。スマートロックというモノは、インターネットを経由して、そのメーカーのプライベートクラウド(サーバー)につながっている。クラウド内の専用アプリケーションと機械的なモノであるドア鍵との総体が、施錠/解錠機能やパスワード変更などの機能を担っている。操作用ヒューマンインターフェースとしては、スマホを利用する。

 料金の一例を紹介しよう。ユーザーは、〇万円でモノであるドア鍵を購入すると同時に、解錠パスワード変更機能などのサービス部分にも加入することとなる。サービス部分は、月々の基本料金に加え、ドア鍵1台当たり〇円/月の従量料金となっている。

 今まで「ドア鍵」という商品は、メーカーにとって、いったん売ったらそれ以降キャッシュを生むことがなかったが、スマートロックは、モノとしての代金の他に、月々のサービス代金が入ってくる構造となっている。先のジェットエンジン等の例と比べると、かなりシンプルでまだまだ発展の余地がありそうだが、これもモノのサービス化の例と言えよう。
 

月々の費用が発生するモノのコネクテッド化。消費者の慣れが必要に

 
 もちろん、多様なモノに関して月々の費用が発生することに慣れていない消費者が、すんなりとサービス部分の料金を払ってくれるとは限らない。そのため、この部分を有料とするか当面無料とするかは経営戦略次第だが、先のジェットエンジンなどを含め、多くのモノで、それをコネクテッド(Connected)化し、サービス部分を構築する模索が続きそうである。

【用語解説】
◆クラウド(Cloud)
どこにサーバーという実体があるか分からず、雲をつかむようなもののためクラウドと呼ばれる。自社が使用している部分を、分かりやすくプライベートクラウドと呼ぶ。クラウドサービス大手事業者の場合、地球規模でサーバー設置拠点を配置している。

◆Connected化
モノをインターネットに繋ぐこと、若しくは、繋がるようにすることをこう呼ぶ。

電気新聞2018年8月27日