関電と岩谷産業が検討するFC船のイメージ図

 関西電力と岩谷産業は11月25日、燃料電池(FC)船の事業化可能性調査(FS)を開始すると発表した。運輸の脱炭素の一環として、水素を燃料とするFC船を実用化し、2025年大阪・関西万博での採用を目指す。運航時に温室効果ガスを排出しないだけでなく、モーター駆動によって匂いや騒音、振動などが抑えられ、快適性も高まる。関電は地上設備と船体のエネルギーマネジメント技術の開発・提供を担う。

 FC船は全長約30メートル、総重量約60トン、速さ約9ノット(時速約17キロメートル)、定員100人程度。万博会場となる夢洲(大阪市)と対岸を結ぶなどメインのアクセス手段となる陸上交通を補う運用を見込む。これと別に、関電はe5ラボ(東京都千代田区、一田朋聡社長)とも電気推進(EV)船の共同検討を行うが、こちらは会場内の近距離移動を担う想定ですみ分けを図る。事業化の際にはニーズに合わせて、いずれも提供できる体制を整えたい考えだ。

 船体には高価なFCスタック・水素タンクのほか、蓄電池も搭載することでコストを抑える。EV船と比べ、充電時間を短く、航続距離を伸ばせることが特徴だ。関電が担う地上のエネルギーステーションにも定置型蓄電池を装備。水素圧縮には大きな電力が必要となるが、そのピークをカットすることで運用コストの低減を図る。

 岩谷産業は燃料電池車(FCV)向けで技術を培った水素充填インフラを担当する。この他、東京海洋大学が船体の開発全般、名村造船所が船体建造、日本政策投資銀行が事業化スキームの検討で参画する。

電気新聞2020年11月26日