分科会に臨む白石分科会長(右)と梶山弘志経産相(東京・霞が関)

 経済産業省は17日、次期エネルギー基本計画で示す2050年カーボンニュートラルへの道筋について議論を始めた。電化を需要側で技術的に確立した脱炭素化の有望手段として位置付けた上で、電力供給側では再生可能エネルギー、原子力を最大限活用する。50年「実質ゼロ」に向けた道筋は、EU(欧州連合)や英国を参考に現時点で想定できる計画を策定し、技術進展などに応じて柔軟に見直す。

 総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)基本政策分科会(分科会長=白石隆・熊本県立大学理事長)で大筋合意した。30年のエネルギーミックスは、一定の積み上げのもとで確実に実現すべき目標として議論するが、50年目標は様々な不確実要素があると判断。あらゆるシナリオを想定した上で、目指すべき方向性として位置付ける。

 実質ゼロに向け、電力部門では非化石電源を拡大するとともに、カーボンリサイクルとセットになった火力発電、サプライチェーンの構築が必要な水素発電も追求。燃料利用や熱利用などの非電力部門では、脱炭素化された電力による電化や水素化、メタネーションを推進する。産業・民生・運輸の非電力部門は多くの技術が確立されておらず、電化を有望手段として位置付けるが、イノベーション追求などの方向性を政府のグリーンイノベーション戦略推進会議などで話し合う。

 今後、基本政策分科会では電力部門の脱炭素化を目指す上で、再生可能エネや原子力、CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)、カーボンリサイクル、水素・アンモニア発電などそれぞれの技術について現状の取り組みや長期の課題を検討する。

 17日の会合では、主力電源化を目指す再生可能エネについて、大量導入を実現する上での課題を議論した。出力変動への対応や系統、国民負担の問題のほか、系統の安定性維持に向け、慣性力確保の重要性が強調された。会合で梶山弘志経産相は「3E+Sのバランスをとり続けていくことが重要」と言及。豊田正和・日本エネルギー経済研究所理事長は、50年実質ゼロの姿について「複数の選択肢を用意してメリット・デメリットを対比できるように提示すべき」と提案した。

電気新聞2020年11月18日