鉄道車両に搭載したエイチツーレックスモブのイメージ

 東芝エネルギーシステムズは8日、船舶や鉄道車両などに搭載する燃料電池を開発すると発表した。出力は200キロワットで、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として取り組む。同社が生産する定置用燃料電池をベースに、小型・軽量化、耐久性向上を図る。研究期間は2024年度まで。21年度までに燃料電池を完成し、22年度には稼働させて性能を検証する予定だ。

 NEDOの委託事業「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発」の研究テーマに採択された。東芝は同事業について、川崎重工業やENEOSなどと共同で燃料電池搭載船の実用化に向けた実証にも取り組む。

 燃料電池搭載船は23年に建造し、24年から横浜港沿岸で実証運航を行う予定。東芝はこの実証向けに今回開発する燃料電池を提供するが、他の適用先も探していく。

 地球温暖化防止や環境負荷低減の観点から、船舶や鉄道などの分野でも二酸化炭素(CO2)が発生しない燃料電池のニーズが高まっている。車やバス向けの燃料電池は商用化されているが、船舶や鉄道向けは高出力と小型・軽量化の両立が求められる。

 応答性の向上や振動対策、安全性確保も実用化に向けた課題。開発する燃料電池はモジュールを並列で接続し、合計出力を数千キロワット規模まで高められるようにする。名称は「H2Rex―Mov」(エイチツーレックスモブ)とした。

 東芝は定置用の技術をベースに、移動型燃料電池の開発を進めてきた。16年にNREG東芝不動産(現野村不動産ビルディング)と東京海洋大学が行う小型船舶「らいちょうN」の実証実験向けに出力3.5キロワットの燃料電池を納入。19年12月には同30キロワットの燃料電池を納めた。

電気新聞2020年10月9日