不在配送問題解消に向けて、5者が共同で実証に取り組む

 日本データサイエンス研究所(JDSC)、佐川急便など5者は7月9日、スマートメーター(次世代電力量計)から得られる電力データと人工知能(AI)を活用し、不在配送問題解消に向けた実証実験を開始すると発表した。今秋をめどに神奈川県横須賀市内でスマートメーターのBルートを用いたフィールド実証を行い、不在配送削減の有効性を確認する。

 JDSC、佐川急便、東京大学の3者はこれまで、AIと電力データを用いた不在配送問題の解消に関する共同研究を進めてきた。今回、新たに横須賀市とグリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合(GDBL)が参画。9日に世界初となる取り組みを進めるため、都内で調印式が行われた。

 実証実験ではモニター参加者の同意取得の下、各戸にセンサーを設置して電力データを取得。その電力データとAIを組み合わせて、最適な配達経路を生成。配達員にその経路を提示し、実際に荷物を配送する。実証は横須賀市池田町・吉井地区の100~200世帯に協力を求める。全体的に不在率が高く、幅広い年齢層が生活しているエリアのため、今後の展開を検討するのに有用だという。9月までモニターを募集した後、10月から実証を始める。実証期間は2~3カ月の予定。2022年の実用を目指す。

 昨今、不在配送が社会問題となっている。個人向け配送では不在配送件数が全宅配件数の約2割を占め、走行距離の25%は再配送に費やされているという。

 JDSCは18年、東大大学院越塚登研究室・田中謙司研究室と連携し、スマートメーターから得られる電力データを基に、AIが配送ルートを示すシステムを開発。東大本郷キャンパス内で行った配送試験で、不在配送を9割減少させた。このシステムを活用し、19年9月には佐川急便の配送実績データでシミュレーションを実施。不在配送の削減や総配送時間短縮などの効果を確認した。今回、5者共同で実地環境での実証を行い、実運用に向けたシステムを構築する。

 新たに参画したGDBLは、電力データを活用して避難状況に応じた避難誘導、商業施設の出店や店舗運営を検討するためのエリアマーケティング分析など数々の実証を行っている。今回はBルートを活用した実証だが、電力データの個人情報活用に関する具体的な仕組みづくりが進展していることも踏まえ、「いずれAルートを活用したケースの下地づくりになる」と期待を示す。

電気新聞2020年7月10日