会期中の筆者ブースでは「フュージョンエネルギーに備えよ」のチラシ約500枚が飛ぶように引き抜かれた。また、約60人の方から名刺を頂いた。その中には、もともと「核融合の先生」ウェブサイトやSNSのことを知っており、「いつも拝見しています」「核融合業界への就活でYouTubeを参考にさせて頂きました」と応援してくださる一般の方々、業界関係者の方も多数おられた。


 一方、核融合に肯定的な意見ばかりがあったわけではない。筆者のブースに来られた方の中には、「核と付くと恐ろしいイメージ」「どのくらい安全なのか」「放射線は出るのか」と疑問を投げかけられた方々もいた。


 かつて原爆で被災された方ともゆっくりお話しをする機会があった。その際は、このエリアに足を運ぶことにどれだけの覚悟が必要だっただろうと心中を察した。筆者は、厳しい意見に対しても、核融合炉から出る放射性物質は必ずしもゼロではないこと、核分裂と核融合の原理の違いなど一つ一つ丁寧にお話しをさせて頂いた。


 今回の展示会では、あらゆる立場や意見との「360度の出会い」を体感することができた。ブースに来訪頂いた全ての方々、出展オファーを頂いた主催者に深謝申し上げたい。
     

 ◇筆者:尾関 秀将氏
 名古屋大学大学院修了後、12年4月に日本原子力研究開発機構に入社。那珂核融合研究所(現在の那珂フュージョン科学技術研究所)でITERプロジェクトに約7年携わった。19年に転職し、現在は電機業界の標準化・認証・ルール形成戦略に関わる。22年12月に個人のウェブサイト「核融合の先生」を立ち上げ、核融合の最新知見をわかりやすく伝える情報発信を開始。同名のYouTubeチャンネルも運営している。

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