東芝エネルギーシステムズは12日、国際熱核融合実験炉「ITER」向け超電導コイル容器の初号機が完成したと発表した。この容器は高温のプラズマを閉じ込める磁場を発生させる「トロイダル磁場コイル」を収納する世界最大級のもので、量子科学技術研究開発機構(量研機構)から受注していた。東芝は12月中に欧州の組み立て拠点であるイタリアへ出荷し、残るコイルと容器も2021年までに順次製作する予定だ。
トロイダル磁場コイルは核融合反応に必要な高温のプラズマを閉じ込める磁場を発生させる超電導コイル。ITERで計18基を使用する。このうち、東芝はコイル4基と容器6基の製作を担当。14年2月に受注し、事前の製作検証試験などを経て16年9月に製作を開始した。
これらのコイル容器は1基当たり高さ16.5メートル、幅9メートル、重量300トンでD字型の形状をしている。大型であるのに加えて超高精度な製作技術も要求されるため、東芝はエネルギー関連機器で長年培った知見と製造能力を駆使した。
ITERはフランスのサン・ポール・レ・デュランス市カダラッシュで建設が進んでおり、25年に運転開始する予定。プロジェクトには日本のほか、欧州や米国、ロシア、中国、韓国、インドの7カ国・地域が参画している。
今回東芝が完成させたコイル容器は、フランスに持ち込む前の組み立て拠点であるイタリアに向けて12月中に出荷する。量研機構と協力して残るコイルと容器の製作も順次進める予定だ。
ITERで実用化を目指す熱核融合発電は燃料である重水素と三重水素を1億度以上のプラズマ状態に保ち、核融合反応によって発生した熱を利用するもの。燃料となる重水素などが自然界に多く存在しているため、次世代の発電システムとして大きな期待を集めている。
電気新聞2018年12月13日
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