川崎重工業は2030年に、直接空気回収(DAC)の事業規模を約500億円に育成する。25年頃に年2万トンの二酸化炭素(CO2)回収プラントで実証し大型化に道筋をつけながら事業を始める。30年に年50万~100万トンの大型設備の建設を目指す。CO2貯留の適地があり、設備を動かす再生可能エネルギーが豊富な地域で事業を推進していく方針だ。

 12日、都内で開いたグループビジョン2030進捗報告会で、DAC事業の業績目標を新たに打ち出した。橋本康彦社長は「CO2回収事業は当社の強みを生かせる分野で、ビッグビジネスに本格着手した」と強調した。

 DACのCO2回収効果を高めるには、設備を再エネで稼働させる必要がある。既にエネルギー事業者とDAC事業の実現に向けた協議に着手した。

 独自の固体吸収材と液体吸着剤を併用したシステムを開発する。空気からのCO2分離に必要な蒸気が60度程度の低温で済む。プラントなどの未利用排熱を活用し、省エネで設備を稼働させる。

 DAC事業では機器設計や製造、ライセンス供与などのシステムを供給する。さらに他社と連携してサービス事業も視野に入れる。回収したCO2を貯留したり、原料にして合成燃料をつくったりする。DAC由来のカーボンクレジットを事業展開に組み込むことも検討する。

 23年のCO2排出量は368億トンと過去最高となる予測が出る。世界の気温上昇を1.5度以内に抑えるにはCO2の排出抑制と、大気中のCO2濃度を下げるネガティブエミッション技術で進める必要がある。国際エネルギー機関(IEA)はDACの需要が50年に年約10億トンに拡大するとみる。川崎重工は、DACが森林と比べ面積当たり1100倍のCO2を回収できる利点があるとした。

 川崎重工は、水素事業の中期業績目標を上方修正した。26年度売上高を従来比100億円増の1400億円にした。液化水素運搬船や基地の実証が着実に進展し、予見性が高まった。欧州や日本で水素燃焼ガスタービンの受注増も織り込んだ。30年の売上高4千億円は据え置いた。

電気新聞2023年12月13日