CO2回収設備の前で川崎重工やRITEなど関係者が来賓と実施したテープカット
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 川崎重工業と地球環境産業技術研究機構(RITE)は、年内にも関西電力舞鶴発電所(石炭、180万キロワット)で二酸化炭素(CO2)回収を始める。実証は2022年度から24年度まで。省エネ性に優れた固体吸収法で実施し、実証規模から約75倍の回収量に引き上げ、商用化を目指す。

 舞鶴発電所でCO2を1日当たり40トン回収する。実証を経て25年度以降の商用化時点で同2千~3千トンまで拡大する方針だ。CO2回収コストは1トン当たり2千円台を目指す。実証でCO2回収システムの運用性や信頼性を評価する。3日、京都府舞鶴市で開いた説明会でRITEの本庄孝志専務理事は「CO2をいかに効率よく経済的に回収するかが重要だ」と強調した。

 固体吸収法による火力発電所でのCO2回収実証は国内初。無数の穴が空いた多孔体にアミンと呼ばれる化学物質を塗り、排ガスを通すとCO2のみ吸収する。蒸気でCO2を分離し、固体は再びCO2吸収に用いる。

 CO2分離時の蒸気温度は60度で済むため、未利用排熱を活用してコスト低減につなげる狙い。CO2回収で現在主流の化学吸収法は120度の高温が必要とされる。川崎重工の安原克樹CN事業推進室長は「CO2分離回収の45%ほどが蒸気のコスト。固体吸収法は、そのコストを約半分に減らせる」と解説する。

 CO2の吸収と分離を繰り返す移動式システムを採用した。コンベヤーで吸収剤を吸着塔、再生塔、乾燥塔の順に循環させてCO2を吸脱着する。吸収剤の追加や交換がしやすく、排ガスの量やCO2濃度に柔軟に対応できる。RITEは固体吸収材と移動層システムを開発し、川崎重工はシステムを改良し吸収剤の破損防止に貢献する。舞鶴発電所に高さ40メートルの試験設備を建設した。

 設備披露会で川崎重工の西村元彦専務執行役員・エネルギーソリューション&マリンカンパニープレジデントは「実証データを用い、さらなるシステムの大型化を目指す」と述べた。来賓として鴨田秋津・舞鶴市長や経済産業省・資源エネルギー庁幹部なども出席した。実証で回収したCO2は液化CO2輸送船に運び込まれ、他事業者の実証にも用いられる。

電気新聞2023年10月4日