東京電力エナジーパートナー(EP)は2023年度内をめどに、カーボンニュートラル都市ガスの供給を始める。Jクレジットなどを活用し、顧客の都市ガス使用に伴う二酸化炭素(CO2)排出量をオフセットする。化石燃料の燃焼などによる温室効果ガスの直接排出を示す「スコープ1」の削減ニーズが「この半年程度で高まってきた」(出口尚平・ガス事業部長)と判断。企業の削減目標達成を後押しする取り組みを進める。

 東電EPは既に、太陽熱や木質バイオマス熱などを証書化したグリーン熱証書を活用し、都市ガスのCO2排出量を削減できるプラン「グリーン+ガス」を提供している。ただグリーン熱証書の場合、温室効果ガス排出量を算定・報告する国際基準「GHGプロトコル」が定義するスコープ1の削減には使えないという制約がある。

 出口部長は「製造業をはじめ、スコープ1をどう減らすかと悩んでいるお客さまは予想以上に増えている」と指摘。顧客と長期の関係性を築くためには「電化による省エネと同時に、信頼性のあるCO2クレジットを都市ガスとセットで提供するのも一つのやり方」との認識を示す。今後、顧客の求めるCO2削減量に応じたクレジットを調達し、供給できる体制を整える。

 有望なクレジットの一つは、省エネ機器導入や森林管理などによるCO2削減分を証書化したJクレジット。民間企業やNGOなどが発行する「ボランタリークレジット」については、顧客ニーズに合致するかどうかを見極めながら活用する方針。ボランタリークレジットには様々な種類があり、必ずしも全てのクレジットが信頼できるわけではないのが実情だ。

 東電EPのガス事業の2022年度売上高は前年度比約6割増の4057億円と、初めて4千億円を超えた。原料費調整額が大幅に増えたほか、卸電力市場価格が高騰する中で発電用の需要が伸び、販売量は同0.4%増の272万トン(LNG換算)と過去最高を更新した。出口部長は「エネルギー業界が変動する中で瞬間的に出てきた数値で、楽観的には受け止めていない」と話す。23年度の見通しは明らかにしていないが、卸電力市場価格の下落を背景に発電用の需要減も見込まれるという。

電気新聞2023年9月6日