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 電力の小売・関連サービス分野においても、デジタル技術を活用した業務効率化・サービス向上の取り組みが始まっている。その1つが、人工知能(AI)の「自然言語処理、対話」技術を顧客からの問い合わせ対応に生かす取り組みだ。今週はその実例として、関西電力や、その情報通信系グループ会社であるケイ・オプティコムでの取り組みを紹介する。
 

直接対話の煩わしさを、はぴ太との会話で楽しくスムーズに

 
LINE 多くの顧客にとって電力会社と直接対話する機会は限定的だ。コールセンターに電話をしたりオペレーターと直接会話することには煩わしさもあり、電力会社を遠い存在のように感じている顧客も多いのではないだろうか。

 実際、電力会社の問い合わせ対応に関して、人との対話がない「ウェブチャット方式」「自動応答」を志向する顧客が増加しているのも事実だ。

 関西電力では2015年2月から、LINEで電気料金・電気使用量を確認できるサービスを開始している。同社のキャラクターである子熊の「はぴ太」と「かわいいね」「うれしいな~」といった日常会話を楽しみながら、例えば「最新の料金教えて」と入力すれば、「はぴ太」が即座に契約種別や直近の電気料金、前月の電気料金、月別の使用量グラフを示してくれる。

 このサービスは、電気の使用量や料金に関する問い合わせにほぼ特化したものであり、その他の問い合わせを対象とはしていないが、将来的には、他社の先行事例も参考にしながら、できるだけ広範囲の問い合わせ対応にデジタル技術を活用できないか、検討を進めているところだ。
 

AIでさまざまな質問に24時間答える

 
ワトソン_4c 一方、電力の関連サービス分野に目を転じると、一歩進んだ取り組みが進められている。関西電力の情報通信系グループ会社 ケイ・オプティコムでは、本年8月にIBM社のAIソフト「Watson」を活用したユーザーサポート(愛称は「つなぐ」)を開始した。同社ホームページ上に入力された顧客からの多様な質問にAIソフトが自動的に回答するサービスだ。

 顧客の質問が「つなぐ」の学習データにマッチすれば「つなぐ」がダイレクトに回答、マッチしなければFAQの上位5つを顧客に示す仕組みとなっている。

 このサービスのアイデアが同社内で出たのは昨年夏。同社への電話問い合わせのうち約半数はウェブ上で問題解決に至らなかったためと分析しており、ウェブ上での問題解決率を向上させることでお客さま・社内双方の「二度手間」を減らせるのではないかという発想だった。少しの言い回しの違いがあっても正確に回答できるよう、過去の対応記録等を基に「つなぐ」に「学習」をさせ、現在も正答率を高めるためのプログラム改善を重ねている。

 現在、「つなぐ」を通じた問い合わせは1日約200件。「時間帯を問わず問い合わせがしやすくなった」「先進的で面白い」と顧客の評判も上々だ。
 

身近な電力会社目指して

 
 15年4月から一般家庭も含めた顧客が電力会社を自由に選べる時代となり、電力会社にとっての顧客サービスの重要性が増す中、気軽に問い合わせをできる「身近な電力会社」を目指して、デジタル技術を活用する動きが始まっている。

【用語解説】
◆自然言語処理、対話技術
人間が日常的に使っている自然言語をコンピューターに処理させる技術。人間の自然な会話をAIが理解できるようになれば、新たな製品やサービスが次々に登場することが期待されている。

◆AIソフト「Watson」
IBMが開発した質問応答システム・意思決定支援システム。1997年に当時のチェス世界チャンピオンに勝利した同社「ディープブルー」に次ぐプロジェクトで開発され、2011年には米国のクイズ番組で人間に勝利した。

電気新聞2017年12月25日

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