東芝は2種類の次世代型太陽電池の開発に力を入れている。「フィルム型ペロブスカイト」は軽量で柔軟性が高く、低コストを強みとする。「亜酸化銅(Cu2O)タンデム型」は従来型太陽電池と重ねることで高効率化を実現し、電気自動車(EV)への搭載などを想定する。現在主流のシリコン太陽電池の生産からは一線を引いていた東芝だが、独自技術を磨き、設置場所や用途を差別化するなどして売り上げにつなげたい考えだ。(匂坂 圭佑)

 東芝は太陽光発電を2030年度に向けた成長事業の一つに位置づける。太陽光事業の売上高を21年度の330億円から25年に530億円、30年に1100億円へ高める目標だ。太陽光事業は既存のメガソーラーEPC(設計・調達・建設)も含まれる。2種類の新型太陽電池は25年度頃の商用化を目指しており、30年度には売上高に貢献する見通し。
 

フィルム型ペロブスカイト→低コストで軽量・柔軟性が強み

 
 ペロブスカイトは基板に材料を塗って太陽電池をつくる。フィルムに塗ることで軽くて曲げられる製品になる。ビルの壁や窓、重量物を乗せられない屋根など、新たな設置場所を開拓できる利点を訴求する。

フィルム型のペロブスカイト太陽電池

 独自技術は塗り方にある。2回に分けて塗るのが一般的だが、1回で済むようにして大面積かつ高品質な膜を早く生産できる。発電効率は15.1%と既存太陽電池並みを達成した。量産化しても効率を維持することが今後の課題だ。

 25年に1キロワット時20円の発電コスト目標を掲げるが、量産化が軌道に乗るまでは高価にならざるを得ない。RE100加盟者など、環境意識の高い顧客に提案して実績を増やす方針。また、ペロブスカイトは開発競争も激しいため、太陽電池を売るだけでなくエネルギーの使い方も含めて特徴を出す。
 

亜酸化銅タンデム型→高効率化を実現、EVへの搭載想定

 
 一方、透明なCu2O太陽電池は、シリコン太陽電池の上に重ねて2層のタンデム型として売り出す。限られた面積で大きな電力が必要な用途に向いており、EV向けの需要を狙う。銅と酸素というありふれた原料によるCu2Oで透明な太陽電池をつくったのは東芝のみ。特許などで技術を守りながら製品化を目指す。

25ミリメートル角のCu2O太陽電池セル

 同じタンデム太陽電池でも宇宙用には高価なガリウムヒ素(GaAs)が使われ、自動車搭載サイズで2千万円にもなるという。これに比べて原料や製造装置の価格を大幅に抑えられる。

 Cu2Oタンデム型は目標とする発電効率30%に対し、28%程度まで進捗。30%あれば1日数十キロメートル程度を無充電で走行できると試算する。目標達成にはCu2O太陽電池単独で10%の発電効率が必要となり、現時点では9%としている。

 課題はセルの大型化で現在、40ミリメートル角を試作している。実用サイズとして40ミリメートル×125ミリメートルの開発を目指す。車の屋根に合わせやすいサイズを狙う。

 日本の太陽電池メーカーはかつて世界でトップシェアを誇ったが、量産化による価格競争が進み海外勢に押されていった。東芝は独自技術を強みとして十分に生かし、販売方法も工夫しながら太陽光事業を育てる方針だ。

電気新聞2022年9月22日