川崎重工業は2023年度、ガスタービン(GT)全機種を水素混焼率30%に対応可能とする。窒素酸化物(NOx)の排出量を抑えられる燃焼器を搭載して売り出す。既設発電所で追加的に水素を利用する場合、混焼率が30%までなら小規模な改造で済むとみられる。将来の水素専焼に向けた「過渡期」のニーズに対応し、温室効果ガス排出削減に貢献する。

 川崎重工は出力1500~3万キロワット級の中小型GTを展開している。低NOx燃焼器を搭載し、水素混焼30%に対応しているのは、1800キロワット級、8千キロワット級、3万キロワット級の3機種で市場投入済み。残る2機種の5千キロワット級と2万キロワット級も22年度中に技術開発を終える見通しだ。

 既設GTで水素を燃料として利用するには、燃焼器の交換に加え、水素供給系統の追加や燃料タンクの設置、防爆装置の変更が必要になる。

 川崎重工の辰巳康治・水素発電プロジェクト開発室長は「水素関連設備のスペースを確保した発電所なら容易に対応できるが、そうでないと非常に難しい」と課題を指摘する一方、「混焼率30%までなら比較的少ない改造で済む」という。水素の燃料利用が本格化するまでの過渡期に適した機種として、30%混焼機をアピールする考えだ。

 混焼率のさらなる向上や専焼に向けては、新たな燃焼器「マイクロミックス型」の開発を進める。シャープペンシルの芯ほどの小さなノズルから燃料を小分けに噴出して燃やす方式で、NOx発生量の抑制と発電効率の向上を両立する。

 マイクロミックス型については千キロワット級GTで専焼の実証を行っている。23年度までに開発にめどをつけ、知見を大型機種に横展開する計画。大型機種の専焼は30年頃の実現を見込む。

 川崎重工はガスエンジンでも水素対応を進める。30%混焼機は25年の商用化を目指す。専焼はGTと同じく30年頃を計画しており、排気再循環(EGR)技術を取り入れた新たな燃焼技術を確立する。舶用エンジンとして開発し、発電用に転用する。

電気新聞2022年9月2日