三菱重工業グループの三菱重工エンジニアリング(横浜市、寺沢賢二社長)は19日、ノルウェーの施設で行った排ガスの二酸化炭素(CO2)回収実験で、最大99.8%のCO2回収率に到達したと発表した。独自のCO2吸収液「KS―21」を用いて、ガスタービンの排ガスからCO2を回収した。他の吸収液を大きく上回るCO2回収率を出せたことから、商用化のめどがついたと判断。今後は販売に本腰を入れる。

 三菱重工エンジは、ノルウェーにある世界最大級のCO2回収実験施設「モングスタッドCO2回収技術センター」で実験した。同社は関西電力と共同開発したCO2回収技術「アドバンスドKM CDRプロセス」とKS―21をこの施設に適用。実験の結果、一般的なアミン吸収液のCO2回収率90%を超える成果が出た。回収しやすい条件に変えた試験では、世界最高水準のCO2回収率99.8%に到達した。

 試験では、KS―21の運用データも収集。さらなる回収率向上に関するデータも集めた。同時に第三者機関から、この回収技術の環境負荷低減に関する評価も取得。販売時にはこの評価結果を生かす。

 「アドバンスドKM CDRプロセス」は、三菱重工グループにとってCCUS(CO2回収・利用・貯留)の柱となる製品。需要のある欧州を中心に提案し、CO2の排出削減に寄与する。

 KS―21は、従来品の「KS―1」に比べ揮発性が低く劣化しにくい。運用中に吸収液の交換頻度を抑えられるメリットがある。KS―1を用いたCO2回収技術「KM CDRプロセス」は世界で13基の納入実績がある。

電気新聞2021年10月20日