三菱重工が英バイオマス発電所に納めたCO2回収の試験装置

 三菱重工業は10日、二酸化炭素(CO2)回収システムの技術ライセンスを英国のバイオマス発電所向けに供与すると発表した。発電所は総出力264万キロワット(66万キロワット×4基)で、運営する英電力大手ドラックスと契約を結んだ。CO2回収装置は2027年にも稼働する予定で、世界最大となる年800万トン以上を回収する見通し。バイオマス燃料の利用とCO2の回収で、発電所稼働時のCO2排出量を実質マイナスにする考え。

 三菱重工子会社の三菱重工エンジニアリング(横浜市、寺沢賢二社長)を通じて契約した。同社は関西電力と開発した独自のCO2回収システム「アドバンスドKM CDRプロセス」の技術ライセンスを供与する。

 三菱重工エンジとドラックスは、20年秋からCO2回収の試験装置をこのバイオマス発電所に導入していた。同発電所での稼働実績と他国でのCO2回収実績が評価され、技術ライセンスの供与に至った。回収量の年800万トンは、北米で稼働する世界最大の回収装置の約5倍に相当する。商用規模の発電所でCO2排出量を実質マイナス化できれば世界初になるという。

 英国政府は、35年のCO2排出削減目標を1990年比78%減に設定している。三菱重工エンジはライセンスの供与を通じて目標達成を後押しする。同社は回収装置のEPC(設計・調達・建設)を支援するほか、CO2吸収液も供給する。

 「アドバンスドKM CDRプロセス」を実プラントに適用するのは今回が初めて。このシステムは揮発性が低く、劣化しにくいCO2吸収液「KS―21」を採用している。世界13基のCO2回収装置に適用した「KM CDRプロセス」の改良版となる。

電気新聞2021年6月11日