オフライン熱輸送型では、大型トレーラーで離れた場所に廃熱を輸送した

 低温廃熱の有効利用で省エネに貢献――。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、高砂熱学工業、東京電力エナジーパートナー(EP)など8者は、低温廃熱を利用した蓄熱システムの実証試験を実施した。オフライン熱輸送型と、定置型の2方式で検証。これまで未利用のまま排出していた低温廃熱を工場の乾燥工程や温水プールの加温に活用し、二酸化炭素(CO2)排出量を7~8割削減した。今後、システムを市場展開しコスト低減を図る。

 実証は2019年7月~20年2月に実施。石原産業、森松工業、日野自動車、産業技術総合研究所、羽村市(東京都)も参加した。産業技術総合研究所が開発した水分を吸着して発熱する蓄熱材「ハスクレイ」を改良して使用。80~120度程度の低温廃熱の蓄熱が可能で、蓄熱密度を従来の潜熱蓄熱材の2倍以上に高めた。

 オフライン熱輸送型では、日野自動車羽村工場のコージェネレーションシステムからの廃熱を蓄熱材にため、塗装工程の空調に利用。さらに、工場から約2キロメートル離れた羽村市スイミングセンターに大型トレーラーで輸送し、温水プールの熱源としても利用した。

 定置型では、石原産業四日市工場(三重県四日市市)の同一ラインで利用。酸化チタンの乾燥工程に適用し、上流にある高温の酸化チタンから発生する熱を蓄え、下流側で放熱して乾燥に利用した。

 輸送型、定置型ともに既存熱源は吸収式冷凍機とガスだきボイラーを使用する。実証の結果、輸送型ではCO2を従来比72%削減。蓄熱効率は、50回の蓄放熱運転で90%以上を達成した。蓄熱材の輸送については、距離や輸送時間が長くなるとその分稼働率が下がるため、高砂熱学工業技術研究所の川上理亮主席研究員は「往復30分以内(10キロメートル以内)が実用的」と指摘。定置型では同8割程度のCO2削減を実現した。

低温廃熱の蓄熱ができる「ハスクレイ」

 システムは今年度から販売を開始した。石原産業はハスクレイを製造し、高砂熱学工業はシステムの施工を担当。東電EPは同社のネットワークを活用し営業活動を展開する。東電EPによると、既に木質バイオマス発電所や工場などから引き合いがあるという。

 工場などでは高温の廃熱を再利用する取り組みは進んでいるが、低温廃熱は大部分が未利用のまま放出されている。東電EP販売本部法人営業部産業事業ユニットの佐藤雄課長代理は「製造コストを低減するためにもシステムの普及促進を図り、CO2削減に寄与していきたい」と意気込む。

電気新聞2021年2月15日