中部電力パワーグリッド(PG)は雪害により損傷した50万V西部幹線の鉄塔について、国道や鉄道線路を横断する区間の安全確保工事を20日までに完了させた。交通に支障を来さぬよう関係機関と綿密に調整し、終電後の深夜から朝方にかけて作業を実施。降雪で視界も悪く厳しい作業環境下、横断箇所上空で架空地線を安全に固定する作業が進められていた=写真=

 吹雪の中でも全集中――。中部電力パワーグリッド(PG)は雪害により損傷した50万V西部幹線の鉄塔について、国道や鉄道線路を横断する区間の安全確保工事を20日までに完了させた。交通に支障を来さぬよう関係機関と綿密に調整し、終電後の深夜から朝方にかけて作業を実施。降雪で視界も悪く厳しい作業環境下、横断箇所上空で架空地線を安全に固定する作業が進められていた。

 損傷した鉄塔7基のうち国道や線路の上を横断しているのは、岐阜県関ヶ原町内の50~52号鉄塔間。19日午後11時すぎ、50~51号鉄塔間を通る架空地線の固定に向けて作業の準備が進められていた。現地気温は氷点下1度。ちらちらと降っていた雪は、徐々に強くなって本降りに。日付が変わった20日午前0時すぎ、作業員がクレーンに乗り込み作業を開始した。

損傷した鉄塔付近で打ち合わせする作業員(写真は50号鉄塔)

 空に向かってクレーンが上昇した時には既に吹雪となっていたが、中断することなく架空地線の固定作業を続けた。手がかじかむほどの寒さで視界も悪い過酷な状況の中、作業員はヘルメットに装着したライトの明かりを頼りに作業に集中。電力の安定供給や公衆保安の確保を現場第一線で支える、プロとして誇り高き“ラインマン”の姿があった。

 50万V西部幹線は15~17日に降った雪の影響で、49~55号鉄塔が損傷。架空地線への着雪により、鉄塔頂部が折れ曲がるなどの被害を受けた。雪害により送電鉄塔が損傷した事例は中部エリアで初めて。中部電PGは24時間体制で監視員を配置し、関係機関と連携しながら公衆保安の確保に全力を注いだ。

 50万V鉄塔の損傷は業界内外に衝撃を与えたが、中部電力パワーグリッドにとっては一層のレジリエンス(強靭性)向上に生かせる機会となり得る。今後進められる鉄塔の改修や損傷原因の詳細な分析などを通じて、若手技術者の育成や技術・技能の向上に寄与することも期待できる。

電気新聞2020年12月22日