渡木を敷いた後はチェーンソーで薄く削りながら、端部を徐々に合わせていく。

 東京電力リニューアブルパワー(RP)は尾瀬の保全・管理活動の一環として木道整備に取り組んでいる。1辺約4メートル・40キログラムほどの渡木を人力で敷設しなければならず、狭い山道では1日当たり5基ほどしか設置できない。東電RP水力部水利・尾瀬グループの大江一彦課長は「多くの方に美しい尾瀬に触れてほしいという思いで取り組んでいる。これからも人と自然環境、人と人との出会いの場であり続けてほしい」と思いを語る。

 尾瀬の保全・管理活動は東京電力時代から50年以上にわたって取り組んでおり、今年4月からは東電RPが東京電力ホールディングス(HD)から事業を引き継いだ。

 尾瀬に敷設されている木道は、植物などが踏み荒らされるのを防ぐ重要な設備で、東電RPは全長の3分の1程度に相当する約20キロメートルの管理を担当。木道の一部には間伐したカラマツを再利用している。劣化を防ぐため、およそ2キロメートルずつを10年に1回の頻度で交換している。

 作業は重労働だ。間伐材を成形加工した渡木、くい、枕木をヘリコプターで搬入し、そこから人の手で敷設していく。50年前とほぼ変わらないやり方で、熟練の技術・技能が要求されるという。
 
 ◇2人掛かりで
 
 10月下旬、木道の敷設を請け負っている東京パワーテクノロジー(東京都江東区、塩川和幸社長)が、狭隘な山道で作業に取り組んでいた。作業員4人が互いに声を掛けつつ、入山者にも配慮しながら作業を進めていく。

 劣化した渡木を外して下の土などをならした後、新しい渡木を2人掛かりで設置する。道が曲がっている部分は、渡木の端を斜めに削りながら隙間がないように合わせていく。くいは地中約50センチメートルに打設。普段はくい打ち機を使うが、搬入できない場所では4キログラムほどのハンマーを使って打ち込む必要がある。
 
 ◇雪積もる前に
 
 尾瀬は雪が降るのも早いため、木道整備は11月2週目までの終了を目指している。東京パワーテクノロジーの現場代理人を務める星野明彦さんは「天候に左右されながら人力で造っているので大変だが、雪が降り積もる前に何とか作業を終えたい」と気を引き締める。

 東電RPは木道整備のほかにも尾瀬の保護に取り組んでおり、湿原回復やシカ害対策への協力など活動は多岐にわたる。大江課長は「これからも、尾瀬を訪れる人に加えて、環境省、地域自治体などと手を携え、自然保護を継続していきたい」と思いを新たにしている。

電気新聞2020年11月9日