スマートグラスは化学分析業務の効率化、エラー防止に効果を発揮している

 東京電力ホールディングス(HD)福島第一廃炉推進カンパニーは、化学分析業務のシステム化を進めている。2019年11月にQRコードの読み取りや音声入力などが可能な端末「スマートグラス」を現場業務に導入し、手入力や書類チェックの作業を大幅に削減。今年9月からは分析結果公表資料の自動作成を始める。効率性、正確性を同時に向上させる取り組みで、生じた余力は廃炉の進展に伴って必要となる新たな分析業務などに充てる方針だ。

 11年3月に事故を起こした福島第一原子力発電所は、敷地、港湾、周辺海域で試料を毎日採取して分析し、結果を公表している。その項目数は事故前の約16倍に増え、年間累計約8万件に達する。さらに、今後は難易度の高い核種分析、放射能濃度が高い試料の分析が必要となることから、こうした状況に対応できる態勢づくりが課題となっていた。

化学分析業務の現場に導入されたスマートグラス

 新たなシステムでは、化学分析データを収集する現場の操作端末として、カメラ、マイク、ヘッドホン、情報表示画面を備えたスマートグラスを活用。QRコードの読み取り、映像送信、音声入力、分析手順の表示、分析値トレンド表示などが可能だ。

 従来手法では試料の量、採取日時といった項目を工程ごとに記入、チェックしており、その作業量は分析作業全体の約3分の1を占めていた。システム化により、年間約150万件に及ぶデータの手入力を約8割削減できた上、業務に伴い年間80万枚発生していたシートが不要になった。

 また、転記ミス、試料の取り違えを防げるほか、分析の際に片手で試料を持ちながらシートに書き込むこともなくなり、安全・品質面のメリットも大きい。9月には収集した分析結果を自動的に公表資料に加工する機能が導入され、一連のシステム化が完了する。化学分析にスマートグラスを活用したシステムは国内初としており、特許を出願中だ。

 防災・放射線センター放射線・環境部分析評価グループの鈴木純一グループマネージャーは、「発電所で測定された分析データは大変注目度が高い。システム化は信頼性の高いデータを社会の皆さまへ迅速に提供するためのものだ」と意義を強調する。

電気新聞2020年8月12日