今後は実際に蓄電池を導入して実証を行う

 東京電力パワーグリッド(PG)は、蓄電池を再利用するシステムの構築に向けた実験を川崎市内で進めている。蓄電池の制御技術を持つ「NExT―e Solutions」(NExT―eS、東京都文京区、井上真壮社長)と協力し、電気自動車(EV)の使用済み蓄電池を複数組み合わせてパック化し定置型の蓄電池として安全に使えるシステムを開発。再生可能エネルギーの系統連系制約の解消や分散型エネルギーリソース(DER)のコスト削減につなげる。

 EVバッテリーの劣化速度は走行距離などによって変わるが、7~10年で交換が必要となる。ただ、蓄電能力は7割程度残っている。EVの量産が始まった頃から逆算すると、劣化バッテリーが出現する時期となるため、蓄電池の価値を最大限に活用することが求められる。

 東電PGは、国内のEVフォークリフトや中国のEVバスから使用済みの蓄電池を回収。その蓄電池をACB(アクティブ・セル・バランス)で一つ一つのセルの電圧を均等化し、AMB(アクティブ・モジュール・バランス)で電池モジュールの電圧を均等化する。さらに、IHS(インテリジェント・ホット・プラグ・スイッチ)で電圧範囲の異なる電池を並列に接続。これらNExT―eSの蓄電池制御技術を活用してシステムを構築した。

 東電PG工務部受変電ソリューショングループの丸山剣一主任は「何も教材などない状態から始めたため、どう動き、どう止まるのが正しいのかを考えるのに苦労した」と振り返る。同システムは、蓄電池のメーカーなどを問わずに利用できることが特徴。だが、種類の違う蓄電池を使うと特性も変わるため、「電圧のしきい値の考え方についても気を使った」と話す。

 定置型の蓄電池の平均価格は、1キロワット時当たり15万~20万円と高い。これを3~5割まで下げ、自治体や商社、VPP(仮想発電所)事業者などに売り込みたい考えだ。10月末から蓄電池を3~4カ所に順次導入する。蓄電容量は100~600キロワット時と幅広い。品質や運用体制、監視体制などを検証するための実証を約1年間行い、2022年から事業展開を目指す。

 東電PGは、使用済みのモビリティー用蓄電池をパッケージ化し、エネルギー分野での活用を促進する。蓄電池データを収集・分析してコストを抑制し、二次活用での品質保証の仕組みを構築する。さらに、二次利用で劣化した蓄電池を回収し、資源化・再利用する一連の流れをつくる考えだ。

電気新聞2020年7月29日