電力データの活用を推進するためには、関連する電気事業法の改正や、一般送配電事業者が行う加工や提供方法に関する全国大の標準ルール作成などの環境整備が必要となる。グリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合(以下、GDBL)では、会員との実証活動を通じて把握したユーザー側のニーズを踏まえ、国への提言や一般送配電事業者への働き掛けを行っている。
電気事業法第23条(禁止行為等)において、一般送配電事業者は、電気の使用者に関する情報を電気事業以外の目的で利用・提供することが禁じられている。GDBLでは、社会貢献、社会課題の解決や産業の発展などに役立てるため、スマートメーターデータをはじめとする電力データを、電気事業以外でも利用可能とするよう国への提言を行ってきた。スマートメーターデータは、その加工の仕方によって、「個人情報」「匿名加工情報」「統計情報」の3つに大別され、経済産業省・資源エネルギー庁所管の電力・ガス基本政策小委員会をはじめとする政府の審議会では、この種類別に議論が進められてきた。
GDBLが事務局となり、民間で統計情報の標準を検討
2018年9月18日、第11回電力・ガス基本政策小委員会において、統計化されたスマートメーターデータ(=統計情報)の活用については、電気事業法上も個人情報保護法上も問題ないとの解明がなされ、「情報提供の主体は一般送配電事業者が担い、個人の同意取得なく活用可能」と整理された。続いて、19年6月26日の同委員会では、提供方法の具体化検討について民間にタスクアウトされた。これを受けてGDBLが事務局となり、電力データ活用検討委員会(以下、委員会)を立ち上げ、定型的な単純加工統計の標準仕様などについて検討を進めている。なお、委員会はデータ活用や個人情報保護法に関する有識者、一般送配電事業者、GDBLおよびその会員で構成され、資源エネルギー庁からもオブザーバー参加を得ている。
GDBLでは、委員会での議論に向けて、一般送配電事業者10社の保有データから標準仕様のデータ項目の候補を抽出した上で、これまでの活動で把握したニーズやユースケースを踏まえて、標準仕様の素案を作成した。さらに、会員との意見交換会およびアンケート調査を実施し、改めて利用者ニーズを整理した上で、19年12月3日開催の第2回委員会で紹介し、議論に反映している=図1。
委員会における計3回の議論を経て、標準仕様のドラフト案を作成するとともに、個人の特定を回避するための少数データの秘匿措置方法などについても整理を行った。
ドラフト案の内容とは
標準統計仕様のドラフト案では、統計データ作成に当たり、集計する項目のことを「集計値」と定義している。例えば、あるエリア内のスマートメーターの数や使用電力量の平均値や合計値などが該当する。また、集計値を分類するための項目を「属性項目」と定義している。例えば、供給電圧分類(低圧/高圧/特別高圧)や建物分類、託送契約分類などが該当する=図2。
集計値と属性項目を組み合わせて数値を算出することで、例えば、エリア内の一般住宅の数、戸建・集合住宅の数、空き家・空き室の数などの推計に活用できると考えている。
このほか、ドラフト案の中では提供エリアの単位(住所/メッシュ)や提供リードタイムなどについても整理を行っている。今後、一般送配電事業者がこれらのデータ加工を行うためのコストや具体的な運用・手続きなどについて継続検討を行い、22年度以降の提供開始を目指すこととなっている。
なお、これら検討の詳細はGDBLのホームページ(https:www.gdb―lab.jp/)で公開している。
次回第4回では、個人の電力データの活用を可能にするための電気事業法改正の動向について紹介する。
電気新聞2020年5月11日