送配電事業者が保有する電力データの活用による、社会貢献、社会課題の解決や産業の発展を目指し、2018年11月に設立した「グリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合」(以下、GDBL)。現在、東京電力パワーグリッド、関西電力送配電、中部電力、NTTデータの4社が組合員として運営している。100団体を超える会員と共に、電力データと異業種データの掛け合わせ分析を行い、様々なユースケース創出に向けて検証活動を行っている。
 

スマートメーターなどの電力データ×異業種のデータで新しい価値を

 
 昨今、様々な産業分野において多様なビッグデータが生み出され、これらを活用した価値創出が期待されている。電力業界においても同様に、送配電事業を通じて生み出される電力データを活用していこうという機運が高まっている。こうした背景の下、スマートメーターデータをはじめとする電力データと異業種データの掛け合わせ分析を通じた、新たな価値の創出を目指し、GDBLが設立された。

 2020年3月末現在、会員数は115団体。金融・流通・運輸・不動産・広告・建設など、幅広い業種の企業に加え、自治体や医療機関、研究機関なども会員となっており、データ活用に対する関心の高さと電力データに対する期待の大きさが感じられる。

 GDBLでは、電力データの活用方法(ユースケース)の創出・実証に向けて、4つのサービスメニューを提供している。これらのサービスを通じてアイデア誕生のきっかけづくりから実証の企画、推進までをトータルにサポートしている。

 1・Showroom(発見)
 電力データ活用の可能性を世の中に発信するための場として、電力データを活用したユースケース事例のデモ展示などの情報提供を行っている。また、会員や加入を検討されている団体に対して、各種説明会やセミナーを行い、GDBLの取り組みについて理解を深めて頂いている。

 2・Incubation Support(共創)
 会員とのアイデアソンなどを通じて、電力データを活用した新しいサービスアイデアを共創するメニューである。具体的なアイデアの創発からスタートしたい会員を対象に実施している。

 3・Business Design(実証)
 電力データを活用したビジネスプロセス変革や新規サービス創出に向けて、特定の会員と相対で実証活動を行うメニューである。業務課題分析を通じて仮説を立てた上で、会員が保有するデータと電力データの掛け合わせ分析を行い、その結果を活用した効果検証までを、会員と一体になって行っている。

 4・Market Place(交流)
 様々なデータと会員、また、会員同士をつなげる場を提供するメニューである。現在は、個別の会員の課題解決に必要な、他会員データのマッチングなどを行っている。今後、電力データおよび会員保有のデータで簡易な分析を行う環境などを整備する予定である。
 

電事法改正や全国標準ルールの作成が課題に

 
 電力データの活用を推進するためには、関連する電気事業法の改正や、一般送配電事業者が行う加工や提供方法に関する全国大の標準ルール作成などの環境整備が必要となる。GDBLでは、会員との実証活動を通じて得たユーザー側のニーズを踏まえ、国への提言や一般送配電事業者への働き掛けを行っている。この活動の詳細は第3回で詳述する。

 次週第2回では、スマートメーターデータの活用事例(防災・エリアマーケティングなど)や、会員と実施したユースケース実証の内容について紹介する。

【用語解説】
◆スマートメーター
月1回の目視検針により1カ月間の電力の総使用量を計測していた従来の誘導型メーターに対し、スマートメーターでは日々30分ごとに使用量を計測し、内蔵する通信機能を活用した遠隔での自動検針を行っている。一般送配電事業者各社が順次設置を進めており、2024年度末までに全世帯・全事業所に設置される予定。

◆アイデアソン
アイデアとマラソンを掛け合わせた造語で、特定のテーマについて複数の参加者が集まり、個人ワーク・グループワークを通じて、新たなアイデアの創出などの活動を短期間で行うイベント。

電気新聞2020年4月20日