新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三首相は4月7日、東京都など7都府県を対象に緊急事態宣言を発令した
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三首相は4月7日、東京都など7都府県を対象に緊急事態宣言を発令した

 政府が新型コロナウイルス感染拡大防止への緊急事態宣言を出したことを受け、経済産業省は8日までに、電力・ガス事業者などに安定供給の継続に万全を期すよう要請した。発電所など重要施設で感染者が発生した場合の人員計画を精査し、サプライチェーン(供給網)の途絶に備え、調達先を多角化することを求めた。人繰りが困難といった明確な理由があれば、火力発電所の定期検査を延長できる関係法令の解釈も明確にした。

 7日に開いた政府の対策本部で改定された対処方針で、緊急事態宣言時に事業継続が求められる事業者として、電力・ガスなどインフラ関係事業者が明記されたのを踏まえた。要請の対象は、指定公共機関の旧一般電気事業者10者と大手都市ガス事業者4者、Jパワー(電源開発)、JERA、日本原子力発電、電力広域的運営推進機関(広域機関)のほか、地方ガス会社など指定地方公共機関の130者。

 要請書では業務計画を順守するとともに、発電所や中央給電指令所、ガス製造所といった重要施設の職員が新型ウイルスに感染した場合に備え、(1)代替要員の確保など人員計画の精査(2)代替施設の活用(3)サプライチェーンの混乱長期化を見据えた代替的な調達先の確保――などを明記。工事会社や保守・点検事業者との連携強化も促した。また、電気事業法など関係法令に基づき、安定供給に支障が及ばない範囲で、検査・工事の実施時期を見直したり、繰り延べたりする措置を講じるよう求めた。従業員が感染した場合には速やかに経産省に報告し、対外的に公表することも盛り込んだ。

 これに関連し、経産省では7日付で電事法の施行規則に基づき、火力発電所の定期事業者検査を繰り延べることができるとする文書をまとめた。定期検査は蒸気タービンで4年、ボイラーで2年などと周期が定められているが、今回の事態が同規則で規定する「検査を行うことが著しく困難な場合」に該当することを運用上、明確にした。具体的には、外出自粛要請などで検査に必要な人員確保が難しい場合や、新型ウイルスへの対応に必要な物資を製造する事業者が、自家発電設備の稼働を続けなければいけない場合を想定。マスクや防護服といった消耗品を集めることが困難なケースにも適用されるとした。

 事業者からの申請を受け、経産省の出先機関である産業保安監督部が時期変更承認を行えば、定期検査の繰り延べが可能になる。同様の特例措置は、直近では東日本大震災でも講じられた。

電気新聞2020年4月9日