経済産業省・資源エネルギー庁は、スマートメーターで得られる電力データの利用拡大に向け、制度設計の基本方針をまとめた。災害時に電力会社と自衛隊・自治体との連携を円滑に進めたり、業界の垣根を越え、社会的課題の解決につながる新たなサービスの創出に役立てる。「情報銀行」のスキームを参考にし、国が認定した中立機関を設けることなどが柱。エネ庁では詳細を詰め、20日に召集される通常国会に電気事業法の改正案を提出する予定だ。

 新たな制度では個人情報保護法の趣旨を徹底させる。先行事例として、エネ庁は一般的な産業分野でデータ活用を推進する仕組みである情報銀行のスキームを基本に詳細設計を進めていく方向性を打ち出した。

 具体的には、国が認可・監督する「中立的な組織」が同意取得のプラットフォームを提供。情報の提供先や目的ごとに利用の可否について需要家から同意を得る。苦情や相談の受付窓口も設置し、提供した需要家が被害を受けた場合には、損害賠償責任などを一義的に負う。

 また、組織内には第三者諮問委員会も設置する。情報提供先の選定が妥当かなど審議・助言を行うほか、情報が適切に使われているかについて監視・監督し、ルールづくりなども担う。

 中立組織は国が認定を行い、業務改善命令や業務停止命令を行えるようにする。違反した場合は、当該認定を取り消すことも可能にするなど、電力データが持つ公共性に鑑み、厳格に対応する。

 一方、需要家にとっては、個人・消費者保護が担保されるかが最大の関心事だ。エネ庁は昨年12月、一部の消費者団体の関係者らと意見交換を行った。出席者からは、同意した後に当初目的から外れて情報が利用されることへの不安や、高齢者らの同意取得に際し、不当な営業・勧誘がないかといった声が寄せられたという。

 電力データの利用拡大を巡っては、当初、エネ庁の研究会で議論を開始。総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)電力・ガス基本政策小委員会でも、主に新たな事業・サービスにつなげる観点から検討されてきた。ただ、昨年9、10月に相次いだ台風による停電被害を踏まえ、その後は電力供給のレジリエンス(強靱性)確保の文脈が強調されていた。

電気新聞2020年1月10日