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 高等専門学校生の参加する「第4回廃炉創造ロボコン」(主催=文部科学省、廃止措置人材育成高専等連携協議会)が2019年12月15日、福島県楢葉町で行われた。会場は原子力研究開発機構の楢葉遠隔技術開発センター。本大会は長期に及ぶ東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業で活躍する、若い世代の人材養成を目指し、16年から始まった。

 4回目となる今回は、書類選考やサマースクールを経て、16高専とマレーシア工科大学から計18チームが参戦した。前回大会同様、ペデスタル(原子炉圧力容器を支える土台)下部にある燃料デブリ(溶融燃料)の調査や取り出しを想定した競技となった。学生たちは各々、廃炉という作業を思い描き、課題と解決策を考え、自らのロボットに反映させた。競技を通して互いに、切磋琢磨する学生たちの姿を紹介する。

 

■円陣■

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競技フィールドとなるペデスタルのモックアップ前で円陣を組み、気勢を上げた選手たち。開会式で選手宣誓を行った大阪府立大学工業高等専門学校の山口健世さんの発案だ。選手はスタート地点となる左右の台から、中央のペデスタルへとロボットを送り込む。

課題
廃炉創造ロボコンのミッションは原子炉格納容器内の圧力容器を支える構造物であるペデスタルにロボットを送り込み、下部のデブリを回収すること

 

■有線■

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競技開始直前、スタート地点で準備する神戸市立工業高等専門学校の選手たち。原子炉格納容器に開けられた長さ4メートル、直径24センチメートルの穴からロボットを送り込むという想定だ。実際のペデスタルは原子炉格納容器の分厚いコンクリートに囲われ、外からの電波は届かない。そのため競技においても有線で、ロボットから送られてくる画像を見ながら遠隔操作をする。

 

■デブリ■

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ロボットはトンネルを抜けると、ペデスタルデッキの開口部へと向かう。そこから子機などを送り込むことによって、約3.2メートル下に置かれた燃料デブリの模擬体(テニスボール、ゴルフボールやレンガを砕いたもの)を拾い上げる。写真の舞鶴工業高等専門学校チームのロボットは、アームを伸ばしデブリをつかみ上げようとするものだった。

 

■回収■

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ペデスタルデッキ下に送り込まれた子機でデブリの模擬体(テニスボール)を回収する、小山工業高等専門学校のロボット。子機を懸垂するシート状のベルトは、配線が絡むことを防止する。またベルトには銅箔が貼り付けられ、子機のモーターへと電力を供給する仕組みだ。小山高専は模擬体を3つも回収することに成功。しかし惜しくも、スタート地点に戻るには至らず、課題完遂とはならなかった。

 

■成功■

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今大会で3校が模擬体の回収に成功したが、スタート地点まで戻り、課題を完遂したのは1校だった。帰還したロボットから模擬体(テニスボールとゴルフボール)を取り出し、笑顔を見せるのは鶴岡工業高等専門学校の選手。与えられた制限時間10分の内、約1分を残してロボットは帰還。テンポ良く作業を進める姿に、会場も大いに盛り上がった。

 

■優勝■

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技術力、アイデアや実用性などを総合的に評価した審査の結果、最優秀賞には鶴岡高専が選ばれた。ロボットの名は「かきぴー」とかわいらしい。リーダーの元木竜矢さんは「昨年は自分が担当した機構に不備があり、悔しい思いをしたので、今回は他のチームの良い機構を取り入れるなど工夫をした。廃炉の環境は無線が使えない。有線の処理の大変さを痛感した」と話した。

 

■友情■

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会場では熱心に語り合う学生たちの姿が見られた。写真は福島工業高等専門学校と一関工業高等専門学校の学生たち。「敵情視察ですか」と問いかけると、「敵ではないですよ、ロボコンを通じて仲良くなったのです」と記者の愚問に力強く返してくれた。エンジニアの卵として友情や仲間意識が深まっているのが感じられた。

 

■交流■

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熊本高等専門学校と、海外から参戦したマレーシア工科大学の学生たち。熊本高専の学生は、ロボットの材料に強化プラスチックを使い軽量なことや、その廃炉作業における利点などを、英語で一生懸命伝えていた。