7日に販売を開始したPCSの新製品。様々な設置条件に対応できる
7日に販売を開始したPCSの新製品。様々な設置条件に対応できる

 富士電機は様々な設置条件に対応できるパワーコンディショナー(PCS)を中核に、自家消費用太陽光発電システムを拡販する。太陽光は売電目的での設備導入が減少する一方、企業が環境対策のため設置する例が増えてきた。富士電機は自家消費に適した「ストリング型」のPCSに逆潮流を防ぐ監視・制御システムを組み合わせて展開。国内や東南アジアの成長市場でニーズを開拓する。

 複数の太陽光発電モジュールを直列に接続した回路をストリングと呼ぶ。従来は多くのストリングを1本の配線にまとめて接続する「集中型」のPCSが主流。この方式は一部のモジュールが日陰に入るなどして電圧が低下すると、それに全体を合わせるため出力が低下するという課題があった。

 ストリング型PCSはストリング単位で接続して回路を構成するため、個別に電圧を制御し全体の出力低下を抑えられる。富士電機が7日に発売した新製品は8つのストリングを接続し、2つごとに電圧制御する仕組みとなっている。

 自家消費用の太陽光発電システムは、工場やビルの屋上など限られたスペースに設置する場合も多い。ストリング型なら一部のモジュールごとに設置方向が異なり、時間帯によって日陰に入る場合にも適している。

 国内市場では主に中国メーカーがストリング型PCSを展開してきた。富士電機は今回初めてこの方式のPCSを投入し、シェアの奪回を図る。定格出力容量は50キロワットと中容量で、世界最軽量の58キログラムを実現。電力損失が小さい炭化ケイ素(SiC)パワー半導体も採用するなど付加価値を高めた。

 先行して発売した海外では、中国・上海にある富士電機の関係会社のほか、NEC関係会社のタイ工場に採用された実績がある。

 富士電機は、今回のPCSを太陽光発電設備を監視・制御するソフトウエアを組み合わせたシステムとして提案する考え。自家消費用途では系統への逆潮流を防ぐ制御が必要だが、そのための出力抑制を解除する際は迅速な回復が可能だ。

 同社はストリング型PCSで、20年度に国内外合わせて700~800台の受注を見込む。このうち自家消費用途はまだ2割程度。企業が事業活動における再生可能エネルギー電源比率を高める「RE100」などの動きを背景に、今後の伸びを期待する。

電気新聞2019年11月29日