大手電力、新電力などの電気事業者47者で構成する電気事業低炭素社会協議会は2日、低炭素社会の実現に向けた電気事業の長期ビジョンを策定したと発表した。「電気の低炭素化」と「電化の促進」を施策の両輪に据え、サービスを高度化していくことで二酸化炭素(CO2)の排出削減を進める。将来の大幅な削減には革新的技術の導入が不可欠と指摘したほか、低炭素型の電力インフラ・技術の海外輸出を進め、地球規模の排出削減に貢献することが必要だとした。

 同ビジョンは、2030年度以降の電気事業の在り方を念頭に置いて策定した。低炭素社会の実現には「S+3E」の同時達成を果たす最適な電源構成を追求することと、電力供給・需要の両面からCO2削減を進めることが重要と指摘。電力供給面は原子力発電の活用、再生可能エネルギーの導入拡大、火力発電の高効率化による「電気の低炭素化」を施策に挙げ、需要面はヒートポンプ(HP)の普及や電気自動車(EV)の充電インフラ開発などによる「電化の促進」を具体策として示した。電力供給のCO2排出原単位を低減していけば、電化によるCO2の排出削減効果が一層高まると指摘した。

 また、CO2の大幅削減を達成するために、革新的技術の実用化に向けて努力する姿勢を強調。電気の低炭素化と電化促進の観点から期待される革新的技術として、高温ガス炉や次世代太陽光、蓄電池、CO2回収・利用・貯留(CCUS)技術などを列記した。海外輸出を進める電力インフラ・技術には、高効率火力やエネルギーマネジメントなどを挙げた。

 日本経団連が昨年10月に温暖化対策の長期ビジョンの策定を会員企業・団体に要請したことを受け、電気事業者の有志でつくる同協議会も策定作業に着手。第5次エネルギー基本計画や、パリ協定に基づく長期低排出発展戦略(長期戦略)の内容も踏まえながら策定した。

 同協議会は、16年2月に設立。電力業界全体で実効性のある地球温暖化対策を推進していくために立ち上げた。

電気新聞2019年10月3日