商業運転を開始した主ダムの全景。下部の建屋が主発電所
商業運転を開始した主ダムの全景。下部の建屋が主発電所

 関西電力は6日、ラオスで開発していたナムニアップ1水力発電所の商業運転を5日に開始したと発表した。ラオスとタイの国境を流れるメコン川支流のナムニアップ川に高さ167メートル、堤頂長530メートルの主ダムと主発電所(27万2千キロワット)、逆調整ダムと副発電所(1万7600キロワット)を建設した。関電がプロジェクトの当初から筆頭株主として主導した初の案件となった。

 タイ発電公社(EGAT)から5日付で商業運転開始の許可を受け、6日に送電を開始した。主ダムの総貯水量は黒部ダム(2億立方メートル)の10倍以上の22億立方メートル、年間発生電力量は15億キロワット時で黒部ダム(10億キロワット時)の1.5倍。関電は、その工事規模や発電規模から「第二の黒四(黒部川第四発電所)」と位置付け、開発を推進してきた。

 2006年4月、関電はラオスとの間で事業開発合意書を締結。13年8月に関電が45%を出資する事業会社「ナムニアップ1パワーカンパニー」を設立し、開発を進めた。

 工事は14年10月に着工。15年6月に河川を一時迂回(うかい)させる「転流トンネル」を貫通させて工事現場を確保し、建設が本格化した。16年4月にコンクリート打設に着手。17年12月には主発電所で水車ランナーの吊り込みを行うとともに、18年5月に主ダムで湛水を開始した。今後、主発電所の電力はEGAT、副発電所の電力はラオス電力公社にそれぞれ27年間売電する。

 自然・社会環境対策にも注力。そのうち、ダムの建設で移転が必要になった少数民族のモン族に対し、事業会社は移転村を建設し、家屋や学校、病院などを整備。農業や生計の改善なども支援した。

 6日、関電本店で会見した国際事業本部国際企画部門アセットマネジメント第二グループの梅崎昌彦チーフマネジャーは「長い時間をかけたが、当社にとって有意義なプロジェクト。困難はあったが、国内事業で培ったノウハウを生かして解決してきた。次のプロジェクトにも生かしていきたい」と述べた。

電気新聞2019年9月9日