公開したロボットアーム(手前)とアクセスレールの試作機
公開したロボットアーム(手前)とアクセスレールの試作機

 三菱重工業は24日、東京電力福島第一原子力発電所向けに開発した、燃料デブリ(溶融燃料)を取り出すロボットアームとアームを載せる土台となるアクセスレールの試作機を報道陣に公開した。アクセスレールは伸縮する構造で、想定では原子炉格納容器側面の開口部から進入。その後、レール先端に固定したロボットアームが格納容器深部で、燃料デブリを回収する。同日は2つの装置の連動試験を公開。今後は試作機で課題を確認し、実用機の開発につなげる。

 ロボットアームなどを公開したのは、三菱重工神戸造船所(神戸市)。開発は国際廃炉研究開発機構(IRID)と共同で行っている。

 同日公開した連動試験では、燃料デブリの取り出しの基本動作と遠隔操作性を確認している。報道陣を前にしたデモンストレーションでは、ロボットアーム先端が地面に設置したマーク部分に接触する様子を公開。高い制御精度を披露した。ロボットアームは6軸で稼働し、ペデスタル(原子炉圧力容器を支える土台)内の底部まで届かせるため、長さは約7メートル。

 先端部に取り付けるツールは、燃料デブリを解体するカッター型、把持するトング型など数種類を用意。ツールは一度、格納容器の外にアームを戻して取り換える。移動速度は1秒当たり約3センチメートルで、今後は速度の向上も研究テーマになる。格納容器内で把持した燃料デブリはアクセスレールの先端部に設置した収容缶に納める。実用化した場合は、1日で約300キログラムの回収を目標としている。

 運転するオペレーターはアクセスレールやロボットアームの動作確認、アーム部に取り付けたカメラの監視などで、6~7人の配置を想定している。

 実用機は、燃料デブリの取り出しが試験的段階から大規模化した状況で適用する見通し。燃料の取り出しは国のロードマップで、2021年からを予定している。現在の試算では、1年で約200日の稼働を見据えており、残りの日数はメンテナンス期間になるという。今後は、装置の動作精度などを向上させるほか、アームに取り付けるカメラや照明の最適な位置などを検討する。

電気新聞2019年4月25日