東京電力福島第一原子力発電所1~3号機の燃料デブリ(溶融燃料)取り出しに向けた調査が着実に進んでいる。3号機、2号機に続き、2019年度上期には1号機でも原子炉格納容器(PCV)内部の詳細な調査を計画する。東電ホールディングス(HD)は、19年度内に燃料デブリ取り出しの初号機と方法を確定する方針だ。各号機の調査結果や過去の知見だけでなく、要員や敷地のやり繰りといった廃炉の工程全体を見渡しながら慎重に検討する。
直近で調査に進展があったのは2号機だ。2月13日、PCV内部のペデスタル(原子炉本体を支える基礎)底部に吊り下げた調査機器で燃料デブリとみられる堆積物に初めて接触し、小石状の塊をつかんで持ち上げることに成功した。粘土状に見えていた大きな塊も実は硬く、取り出すには「切る」「削る」などの作業が必要だと分かった。
また、18年1月のPCV内部調査で取得した映像を見やすく処理した上でパノラマ合成を施した。これにより、堆積物の形状や広がり方、構造物の位置などペデスタル内部の全体像が把握しやすくなった。19年度下期に予定する堆積物の少量サンプリング調査、その先の燃料デブリ取り出しに向けて大いに役立つ知見だ。
◇保管場所も課題
しかし、現時点で初号機は2号機が最有力かといえば、そうとも言い切れない。
1号機は19年度上期にPCV内部調査を計画しており、状況把握が大幅に進むと予測される。堆積物が水中にあるため、潜水機能付きボートを機能ごとに6種類投入。堆積物に近づいて撮影するほか、3次元形状測定、中性子束測定、さらには少量サンプリングを行う予定だ。
3号機は17年7月に実施したPCV内部調査で相当な情報を得ている。PCV底部から約6メートルの高さまで水がたまっているため、水中を自由に動けるロボットで3日間にわたり撮影。ペデスタル底部に岩状、小石状、砂状の堆積物が分布していることや、圧力容器内の構造物だったとみられる落下物を確認した。PCV側面からペデスタル内につながるルートに大きな障害物がないことも分かった。水位を下げられるかどうかもポイントになる。
ただ、燃料デブリ取り出しの初号機と方法を決めるには、各号機の調査結果以外の要素も十分に考慮する必要がある。福島第一の廃炉では複数の現場作業が同時に進み、マンパワー、資機材、敷地をうまく回していかないと、無理や無駄が生じて安全・品質に悪影響を及ぼす事態につながりかねない。取り出した燃料デブリを保管する場所も検討課題だ。
◇工程通り着実に
福島第一の廃炉は事故炉だけに未知の部分が多い。30~40年といわれる長丁場を乗り切るには、一つ一つの工程でしっかりと結果を出し、次のステップを示していくことが求められる。福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデントで廃炉・汚染水対策最高責任者の小野明常務執行役は、「華々しくはなくても必要な作業は着々と進んでいる」と力を込める。
燃料デブリは主要なリスク源の一つで、事故の象徴的存在でもあり、関連する工程は特に注目度が高い。中長期ロードマップの通り、取り出す初号機と方法を19年度に確定し、21年度に取り出しを開始するという目標を達成できれば、廃炉全体における大きな節目となるはずだ。
電気新聞2019年3月6日