3回シリーズでお届けする、中部電力の新たな成長分野確立に向けたIoT戦略、第2回はエネルギー分野の新サービスを取り上げる。電力事業の経営環境の中で、昨今、分散型電源の普及による電力の需給構造の変化や、AI、IoT、ブロックチェーンなどの技術革新による事業環境の変化が著しい。そこで今回は、中部電力の「ローカルグリッドの高度化」と、「これからデンキによる新たな価値の提供」に向けた取り組みを紹介する。
 

豊田市で家庭の機器を制御するVPP実証

 
図_豊田市バーチャルパワープラント_4c
 これまでの電力供給は、電力会社の大規模発電所から送配電網を経てお客さまへお届けする一方向のものが大半であった。しかし、分散型電源が普及し、需要地の送配電網(ローカルグリッド)に直接接続される割合が増え、電力の需給構造に変化が起きている。

 また、太陽光、風力などの再生可能エネルギーは、天候による出力変動が大きく、接続されるローカルグリッドへの影響も懸念される。一方で、分散型電源を活用したエネルギーの地産地消ニーズも出てきており、ICTの進展によりその実現可能性も高まっている。

 中部電力では、愛知県豊田市の「豊田市バーチャルパワープラントプロジェクト」で、再生可能エネルギーの出力に合わせ、お客さま設備の消費・出力を調整する実証試験を行っている。具体的には、家庭や企業が保有する全館空調やヒートポンプ給湯器、さらにはプライグインハイブリッド車(PHV)や蓄電池などの設備の稼働時間や充放電量を、あたかもひとつの発電所のように制御するものである。

 また、同一配電系統の電圧・電流調整のために制御する実証も実施しており、これにより将来的な設備の合理化なども期待できる。

 さらに、これらの制御を組み合わせ、エネルギーの地産地消ニーズの広がりにも対応していく。

 様々なニーズに合わせた電力制御の最適化には、AI技術を含む、より高度な制御の実現が必要となる。中部電力では電力の需給構造の変化に、先端技術を活用したローカルグリッドの高度化で立ち向かっていく。
 

卒FITを活用できる「これからデンキ」

 
図_これからデンキ_4c
 2019年11月から、住宅用太陽光発電の余剰電力の買い取り期間満了を迎えた、いわゆる「卒FIT電力」が、お客さまの自家消費や一般企業への売電など、従来とは異なる流通の対象となることも想定される。

 中部電力では、この卒FIT電力を対象に、お客さまが発電した電気をお客さまが様々な形で活用できるサービス「これからデンキ」を提供していく。具体的には、自家の太陽光発電設備で発電した電力の余剰を、お客さま自らがご利用するために中部電力がお預かりすることや、離れて暮らす家族、地域の公共設備、応援したい企業などとシェアするといったサービスとなる。

 このような「お客さま同士をつなぐことで新たな価値をお届けする」サービスを可能とするP2Pプラットフォームの提供のため、最新のブロックチェーン技術の活用も選択肢に入れながら、基盤構築の検討を進めている。

 また、これらの実現には、優れた先端技術を持つスタートアップ企業との協業も積極的に行い、スピード感を持って進めていく。

 このように、電力を取り巻く事業環境が激しく変化する中、中部電力は先端技術を駆使し、新たな時代の安定供給という「変わらぬ使命の完遂」と、お客さまの多様なニーズにお応えする「新たな価値の提供」の同時達成を目指していく。

電気新聞2019年1月21日
 

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