3回シリーズでお届けしてきた、中部電力の新たな成長分野確立に向けたIoT戦略。最終回はエネルギー事業の領域を超えたサービスの開発を取り上げる。中部電力はAI、IoT技術を活用した双方向の次世代型社会インフラである「コミュニティーサポートインフラ」の構築を目指している。そこでこの足掛かりとなる「コネクテッドホーム事業」と、パーソナルデータの安全安心な流通を可能にする「地域型情報銀行」の取り組みを紹介する。
 

ネコリコで実現するコネクテッドホーム

 
図_ネコリコ
 中部電力はインターネットイニシアティブ(IIJ)と合同会社ネコリコを設立し、コネクテッドホーム事業に参入した。一般にコネクテッドホームで提供されるサービスは、便利で快適な暮らしの実現のため、家庭内に家電コントローラー、環境センサー等のIoTデバイスを設置し、これらをスマートフォン等で制御するといったものが主流である。

 中部電力はこのコネクテッドホームを、暮らしを便利で快適にするサービスだけでなく、見守りや健康づくり等様々な課題を解決するようなサービスも提供するプラットフォームとして開発していく。

 また、まずは個別の宅内に向けたサービスを提供していくが、次に離れた家族とのつながり、そしてコミュニティーでのつながりに資するサービスへとその提供範囲を拡大していく。これにより、中部電力はコネクテッドホームを、経営ビジョンに掲げているコミュニティーサポートインフラを提供するプラットフォームへと発展させていく予定である。

 このコネクテッドホームサービスはネコリコから中部電力へ提供しているが、ネコリコから中部電力以外の事業者へのOEM提供も可能である。よって、各事業者が自社のブランドでお客さまへ提供していただくことができる。

 中部電力はより多くの事業者・お客さまにご利用頂けるよう、今後も魅力あるサービスを追求していく。
 

地域型情報銀行の構築へ豊田市で実証

 
地域型情報銀行
 近年、国などにおいて、パーソナルデータを個人の同意の下で管理・活用する「情報銀行」の検討が進んでいる。

 中部電力は大日本印刷(DNP)や豊田市等の6者で生活者のパーソナルデータを地域内で安全安心に活用し、生活者や事業者にメリットを提供する「地域型情報銀行」の実証を愛知県豊田市で実施している。

 AI、IoT技術の急速な進展で、データ活用型サービスが普及しつつあるが、高齢化などの様々な社会課題を効率的かつ低コストに解決することや、より個人の状況に即したサービスを提供するためには、パーソナルデータの活用が不可欠である。

 そこで中部電力は、これまで電気事業を支えて頂いた地域のお客さまが安全安心にデータをご活用頂くための基盤となる地域型情報銀行の構築を目指している。そして、地域の自治体やサービス事業者と、新たな情報活用サービスを創出していく。
 

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 電力会社は、地域のお客さまへの電力安定供給を通じて、地域密着型の社会インフラ企業という立場を築いてきた。今後顕在化してくる人口減少や少子高齢化等から生じる地域の社会課題にも、ソリューションを提供可能な立ち位置の企業であると考えている。

 中部電力は、このためにコミュニティーサポートインフラの構築を目指しているが、この社会課題は言うまでもなく日本全体の共通課題であるため、今後は、各電力会社や他業種とも連携しながら進めていき、新たな時代の電力会社像を共に具現化していきたい。

電気新聞2019年1月28日
 

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