中部電力は2018年3月「中部電力グループ経営ビジョン」を改定。それまでエネルギー事業で培ってきた強みに最新の人工知能(AI)、IoT技術を合わせ、コミュニティーの抱える社会課題の解決に寄与する「新しいコミュニティーの形」を提供し、これを成長分野として確立していくことを表明した。今回から計3回、中部電力の新たな成長分野確立に向けたIoT戦略について連載していく。初回は経営ビジョン実現に向けたアプローチと新規事業の取り組みの全体像を紹介する。
 

個人とコミュニティー、2つのアプローチ

 
 人口減少や経済成長の鈍化、それに起因する様々な社会課題が深刻化する中、中部電力は「当社グループがお客さま・社会に提供すべき価値は何であるか」を改めて見つめ直した。新規事業に関してはエネルギー事業というこれまでの事業領域を超え、お客さま・社会を結ぶ「新しいコミュニティーの形」を提供していく。その際、当社グループは2つのアプローチを組み合わせ、様々なコミュニティーへ「つながる価値」を提供していく。

 一つは様々なデータを活用した個人へのアプローチで、お客さま一人一人の生活の不便に着目し、様々なデータを活用して、生活の質の維持・向上を図っていく。

図_生活向上_4c
 
 もう一つはコミュニティーへのアプローチで、一方向での供給であったエネルギーインフラを、他の社会インフラやお客さま設備をつなぎ双方向の次世代社会インフラ「コミュニティーサポートインフラ」に進化させる。

 足元の取り組みとしてIoT技術を用いた便利で快適なくらしをお届けするコネクテッドホーム事業の実証を、インターネットイニシアティブ(IIJ)との協業で行っている。

 またこの他にも、電柱にセンサー、カメラを搭載し次世代型の電柱へと進化させるスマートポールプロジェクトを展開している。これらのサービス開発と提供に当たっては、発電・電力ネットワーク・販売各カンパニーをはじめ中部電力グループのリソースを結集する体制で取り組んでいる。
 
図_地域サービス_4c
 

ICT事業を集約する事業創造本部を設置し、新サービスをいち早く提供

 
組織図_中部電力_4c

 中部電力では、2018年4月にコーポレート本部に事業戦略室を設置し、従来の事業領域の枠を超えた新たなサービスやビジネスの創出など、成長戦略を立案・推進してきた。19年4月に設置する事業創造本部には、コーポレート本部事業戦略室、ICT戦略室および当社グループ会社の中電シーティーアイのICT事業開発に関する機能を統合する。これにより、AI、IoTなどの先端技術を活用した一体的な開発とその提供体制を整え、お客さまや社会のニーズに沿った新サービスを早期にお届けすることで、成長戦略の実現を加速していく。

 また新たに東京にも活動拠点を設ける。これは先端技術や事業開発に精通した豊富な人財の活用や、首都圏の他業種・ベンチャー企業との連携強化を狙ったもので、業界の垣根を越えた協業を積極的に展開していく。

 現在、お客さまや地域社会との接点となるサービス開発を進めるとともに、これらから収集されるデータをデータプラットフォームに蓄積し、データを活用したサービスの開発を進めている。

 このように「コミュニティーサポートインフラ」の実現に向けて、中部電力グループ外のリソースを結集して取り組んでいくことが重要と考えている。先述した東京の活動拠点も活用しながら、様々な企業との協創活動を推し進め、エコシステムを構築していきたい。

電気新聞2019年1月7日