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4、東北・新潟の科学技術プロジェクト
先ほど述べたように、東北には「ITER BA」「ILC」「ナノテラス」「福島イノベーション・コースト構想」などの大型科学技術プロジェクトが推進されている。東経連が設置した中小企業の支援を行う東経連ビジネスセンターでは、大型科学技術プロジェクトからイノベーションの創出を促すため、東北・新潟の中小サプライヤーとこれらのプロジェクトに携わる研究者とのマッチングに取り組んでいる。中小サプライヤーは、ILCやナノテラスに用いられる加速器の製造や技術開発に取り組んでおり、これらを通じて獲得した技術ノウハウは、半導体やロボットなどの開発に応用されている。
24年11月、東北大学は最初の国際卓越研究大学に認定された。国際卓越研究大学では、10兆円ファンドのキャピタル・ゲインを用いて、国内外から高度人材を確保・育成し、イノベーション創出につなげようとしている。東北の経済界としても大いに期待している。
世界の研究者が検討を進めるILCとは、直線型の巨大加速器を用いた世界最先端の素粒子物理学の実験施設である。わが国では、1949年に湯川秀樹博士が中間子論でノーベル物理学賞を受賞したことに始まり、7人の素粒子物理学者がノーベル物理学賞を受賞している。現在も数多くの日本人の素粒子物理学者が世界で活躍している。
さらに世界最高のビーム制御技術を持つ「高エネルギー加速器研究機構」(茨城県つくば市)など、わが国の研究機関は世界最先端の加速器技術を有している。また、日本企業の高度な技術力も加速器開発を力強く支えている。これらの研究力と技術力は、日本にILCを実現する上での大きな優位性になると考えられる。
ILCが日本で実現すれば、日本が国際頭脳循環の拠点として、最先端の素粒子物理学研究やイノベーションの舞台となることが期待できる。東経連としても関係機関と連携して、政府などへの働きかけを強化して参りたい。
電気新聞2025年2月17日