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◆国際頭脳循環の拠点形成を
  ◇「基礎研究」「高度人材」育む/技術革新で競争力強化へ

 1、科学技術創造立国・日本

 資源の少ない日本において、私はわが国の科学技術・イノベーション政策が日本の経済成長を支える原動力であり、激化する国際競争を勝ち抜くための鍵であると考えている。2026年度から始まる「第7期科学技術・イノベーション基本計画」の策定に際し、科学技術創造立国の実現を目指す議論を期待している。

 22年10月、東北経済連合会(以下「東経連」)と日本経済団体連合会(以下「経団連」)は、「科学技術を源泉とする産業競争力の強化により、社会変革の姿を描く」というテーマの下、共同宣言を採択した。

 1つ目の柱は「科学技術プロジェクトの推進と産業競争力の強化」である。「ITER(国際熱核融合実験炉)BA(Border Approach)」「国際リニアコライダー(ILC)」「ナノテラス(3GeV高輝度放射光施設)」「福島イノベーション・コースト構想」などの大型科学技術プロジェクトを推進し、イノベーションの創出を通じて東北地域だけでなく日本全体の産業成長に寄与することを目指している。

 2つ目は「多様な人材の活躍推進」である。これらのプロジェクトを成功させるには、高度人材をはじめとした多様な人材の確保と育成が必要不可欠である。

 また、24年12月、経団連は「成長と分配の好循環」をテーマに、「FUTURE DESIGN 2040」を提言した。少子高齢化や資源不足といったわが国の課題を乗り越え、科学技術立国と貿易・投資立国の実現を目指す方針が示されている。しかし、日本の政府研究開発費(対GDP比)は20年時点で0.5%と、韓国(1.08%)やドイツ(0.93%)に比べて大きな遅れを取っている。この状況を改善するには、基礎研究や学術研究への国の投資の重要性を国民に広く理解してもらう必要があるとしている。

 わが国が「科学技術創造立国」としての地位を確立し、持続可能な産業競争力を高めるためには、基礎研究の充実と高度人材の活用が鍵となる。科学技術を基盤とした産業競争力の強化こそが、日本の未来を切り拓く原動力となると考えている。