
東京電力ホールディングス(HD)は、福島第一原子力発電所事故直後に汚染水をためるのに使われていた横置きタンクについて解体作業の全自動化に挑んでいる。切断やレーザー照射などの全工程を自動化することでタンク1基を1日で解体できるようにし、作業員の被ばく線量を抑えながら作業の効率を高める。
発電所敷地内に横置きタンク専用の解体システムを設置した。既存の資材倉庫を解体施設に転用し、コストを抑えている。
全367基の横置きタンクを対象に2024年11月から解体作業を始めており、26年度末頃に完了する予定となる。
横置きタンクの解体は今回が初めてとなるため、まずは放射性物質で汚染されていない未使用分28基を試験的に解体している。
現在は本格稼働に向けてシステムの調整を続けており、解体には1基当たり3日程度を要している。全自動化後は1日に短縮し、監視要員を現場に1人配置する体制での運用を目指す。
横置きタンクは円柱形で全長13.5~15.1メートル。設置面積がかさむことから現在は使用されず、発電所敷地内に仮置きされてきた。

使用済みの横置きタンクは、内面に貼られている繊維強化プラスチック(FRP)樹脂が汚染されている。解体作業では、最初にタンクを輪切りにし、13分割する。次にFRP樹脂にレーザーで切り込みを入れた後、レーザーを照射して加熱する。続いて急速冷凍し、たたくことで鋼材からFRP樹脂をはがす。
15日には解体の現場を電気新聞に公開した。メディア向けには初公開となる。現在は未使用分を解体しているため、軽装備でも作業の様子を間近で見られる。同日は東電HDの社員と、システムの元請けを担う大成建設の社員が現場に立ち会い、6基目のタンクを解体していた。
横置きタンクの解体を担当する東電HD福島第一廃炉推進カンパニー福島第一原子力発電所計画・設計センター土木水対策技術グループの渡邉崇チームリーダーは「大成建設をはじめ様々な企業から意見を頂きながら、コストダウンを図るとともに、1日当たり1基解体の目標に早期にたどり着きたい」と話していた。
電気新聞2025年1月17日