政府は省エネ住宅の普及拡大に本腰を入れる。これまで推進してきたZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)に加え、さらに省エネ性能を高めた「GX志向型住宅」の普及に注力する。国土交通省、環境省、経済産業省が連携を図り、各省の支援制度を併用できる環境を整備。省エネ住宅に対する支援を強化し、より省エネ性能の高い住宅を増やして底上げを図っていく構えだ。
政府が9日に国会提出した2024年度補正予算案では、国交省と環境省の連携による「子育てグリーン住宅支援事業」として2250億円を計上。このうち500億円はGX経済移行債を活用し、GX志向型住宅への支援に充てる。
従来から推進しているZEHは、(1)再生可能エネルギーを導入して年間の1次エネルギー消費量を実質ゼロ以下にすること(2)再エネを除いた1次エネ消費量の削減率20%以上(3)断熱性能等級5以上――を満たすことが条件だった。
一方、新たな枠組みとなるGX志向型住宅は、(1)の条件は同様だが、(2)の再エネを除く削減率は「35%以上」、(3)の断熱性能等級は7段階のうち「6以上」を前提とし、「ZEH水準を大きく上回る省エネ住宅」と位置付ける。
GX移行債500億円の活用を通じて、1戸あたり160万円を補助し、約3万戸への支援を想定する。従来のZEH支援は子育て世帯に限定していたが、GX志向型住宅への支援は対象を拡充。全世帯の新築住宅(注文、分譲、賃貸)を対象に支援する。
◇投資戦略を改定
GX移行債の活用にあたり、政府はGX実行会議で示す分野別投資戦略を改定。11月に行われた専門家ワーキンググループ(WG)で、家庭部門の投資促進策に「ZEH水準を大きく上回る省エネ性能を有する住宅の導入支援」との文言を追加する方針を示した。
またデマンドレスポンス(DR)へのアプローチとして、家庭用蓄電池に対する補助を経産省が展開する。新築住宅を対象とした支援では、これら国交省、環境省、経産省の各事業を組み合わせて活用できる。このほか、既設住宅の省エネ改修に関しても、3省の各制度をワンストップ申請で併用できる体制を構築する。
政府は現行のエネルギー基本計画で、50年に既設を含む住宅ストック平均でZEH水準の省エネ性能が確保されることを目指している。
22年時点の調査では、住宅総数5400万戸のうち、95%にあたる5100万戸がZEH水準を満たしていないことが分かった。
改正建築物省エネ法の施行により、25年度からは全ての新築建物に省エネ基準への適合を義務化。30年以降はZEH水準への適合を求めるが、カーボンニュートラルを見据えた50年時点でもZEH水準に満たない住宅が一定数残ることが想定される。
◇起死回生の一手
より省エネ性能の高いGX志向型住宅が起死回生の一打となり、社会に浸透していくことが期待される。国交省住宅局の担当者は「ストック平均でZEH水準を確保するためにはGX志向型住宅を一定数増やしていく必要がある」と話している。
電気新聞2024年12月11日