FASTのシステムイメージ


 日本で初となる民間主導の「トカマク型」核融合発電プロジェクトが始動した。国内外の多数の研究者や企業が参画しており、核融合スタートアップの京都フュージョニアリング(東京都千代田区、小西哲之社長)がリーダーとして取りまとめ役を担う。核融合エネルギーの早期実用化の鍵となる発電実証を、政府が掲げる2030年代に行うことを目指す。まずは25年度内の概念設計完了に向け活動を進める。

 12日に発表した。名称は「FAST(ファスト)」。東京大学など国内の主要大学に加え、海外の核融合スタートアップや研究機関も参画する。国内産業界からは、核融合産業協議会に参加する企業を中心に大手商社やフジクラ、鹿島などが協力する。

 FASTでは、核融合分野で開発されてきた各要素技術を統合・運用し、実際に発電することを目指す。具体的には、重水素とトリチウム(三重水素)による核融合反応で5万~10万キロワットの発電出力を達成するとともに、千秒の放電時間を目標に掲げる。

 また、燃料となるトリチウムを発電の過程で自己生成・充足する燃料サイクルも実証する。運転保守や廃棄物処理も含めて各技術的課題を解決し、商用炉の建設など早期実用化に向けた基盤を構築していく。今後、専門家による概念設計チームを組織し、25年度内の完了に向けて活動を進める。核融合反応に伴って放射線も発生するため、プラント全体の安全解析やサイト公募、立地準備も並行して進めていく。

 また、事業会社化なども選択肢とした組織体制や資金確保策についても検討を加速させる。国内ではヘリカル型やレーザー型で発電実証に取り組むスタートアップは存在するが、トカマク型は政府の原型炉計画のみだった。核融合の方式の中で最も知見が蓄積され主流と目されるトカマク型で開発を進める今回の民間プロジェクトが誕生したことは、早期実用化に向けて画期的な出来事となる。

電気新聞2024年11月13日