理化学研究所と高輝度光科学研究センターは、大型放射光施設「SPring―8」(兵庫県佐用町)について、大規模改修に向けた設計指針を公表した。磁石を電磁石から永久磁石に置き換えることなどにより、消費電力を半減させつつ性能を約100倍に高める。2029年度の更新完了・供用開始を目指し、計画を進めていく考えだ。
SPring―8は光源の心臓部を担う加速器システムが運転開始から30年弱経過するなど、老朽化の進行に伴って信頼性の高い運転の継続が難しくなるとともに保守コストも増加していた。加えて、海外の同様の施設は更新が先行して進んでおり、国際的な競争力の維持も困難になっていた。
こうした状況を踏まえ、文部科学省は昨年に報告書を取りまとめ、大規模改修の実施を決定。性能の飛躍的な向上を図ると同時に、使用電力の削減も両立する方針を示していた。
現在は「SPring―8―II」の名称で、25年度から計画を開始するための準備・協議を進めている。27年度からSPring―8を停止し、工事など実際に改修を始めることを目指している。
設計指針では、磁石の置き換えのほか、光源技術の進歩を踏まえ電子ビームの蓄積エネルギーを低減することなどにより、性能向上と消費電力低減の両立を図る。性能を示す放射光の輝度を従来に比べて約100倍に高める計画で、改修完了後はより高精細なデータを短時間で取得できるようになる見通しだ。
電気新聞2024年10月25日
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