◇強化分野に集中

 2年目以降は初年度で生み出した経営資源を強化分野に投資することで、稼ぐ力を強化する。エネルギーやインフラ、半導体、デジタルを強化分野に位置付け、成長の牽引役を担わせる。低採算の事業分野は収益悪化の構造的要因を見極め、それに合わせた対策を取る。これにより26年度の営業利益3800億円と営業利益率10%を目指す。

 新中計策定で中心的役割を果たした池谷光司副社長は「我々が期待されている電力のところにきちんとリソースを投入する」と話す。実際に東芝は7月、送変電機器の増産投資を発表した。開閉装置や変圧器を生産する浜川崎工場(川崎市)とインドの東芝電力流通システム・インド社(TTDI)に総額約200億円を投資。両拠点の生産能力を23年度比で約1.5倍に引き上げる計画だ。

 同社のエネルギー事業は、脱炭素の潮流やデータセンター向けの電力需要増加などでグリッド分野中心に追い風が吹く。今後は設備とデジタル技術の融合を図りながら、再成長を実現する。

 24年度は国のエネルギー基本計画改定も控える。東芝の新中計では原子力や火力を含むパワーシステム事業について、エネルギー基本計画での位置付けが注目される原子力新設などのアップサイドポテンシャルは考慮されていない。池谷副社長は「原子力や火力は、第7次エネルギー基本計画での位置付けも踏まえたさらなる成長戦略をこの先1年くらいでまとめていきたい」と意気込む。

 ◇改革PTを新設

 東芝は今月1日、中期経営計画に沿った施策を着実に実行するため、経営改革プロジェクトチームを立ち上げた。池谷副社長の下で同チームを率いるのはパワーシステム事業の担当役員だった藤塚真也氏だ。ここにも東芝がエネルギー分野を強化しようという意思が表れていると言えそうだ。

 コーポレート部門と事業部の協働体制を活性化するための組織改革も進める。25年度上期中に、東京都港区にある浜松町本社を、川崎市にある川崎本社を中心とする川崎地区に移転・集約。人材を集め、一体的な経営を実践する。

電気新聞2024年8月15日

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