◇福島第一廃炉巡り活発な質疑/世界最先端の知見共有

 今回のWM2024では、11分野の235セッションが、19会場で並行して実施された。参加者は、プログラムを事前にチェックし、参加するセッションを選び、会場間の移動が必要で、それをサポートするスマートフォンアプリが用意された。今回は、技術セッションの中から、読者の参考になりそうな内容を紹介していこう。

◆廃止措置(D&D)関連(Track6)
 ▼福島第一廃炉セッション

 国内外の英知を結集して取り組まれている東京電力福島第一原子力発電所の安定化および廃炉作業はWM国際会議でも関心が高く、情報発信と、世界中の最新かつ最先端の知見・経験に接し、意見交換を行う場となっている。

 2012年に原子力安全推進協会(JANSI)の藤江孝夫理事長(当時)が福島第一原子力の状況を講演されて以来、14年に国際廃炉研究開発機構(IRID)、16年に原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)が基調講演を行った。17年には、日本が「Featured Country(特集国)」とされ、福島第一廃炉に加えて、福島復興、地域との共生、原子燃料サイクル、通常廃炉などのセッションと、展示会場に「JAPANパビリオン」を設けた。

 18年からは毎年、福島第一廃炉パネルセッションを設定している。WM2024での実施結果はの通り。


 パネルセッションでは、以下の質問が出され質疑応答・議論が行われた。

 (1)どの原子炉の廃炉が最も難しいと考えているか(2)ジオポリマーが汚染水削減にどのように役立つか(3)3D(3次元)スキャン技術の次のステップの構想(4)原子炉建屋屋上のカバーが建屋ごとに異なる理由(5)建屋カバーは恒久的な施設かどうか(6)汚染されたホースや配管の処理や廃棄物の管理方法(7)ロボットシステムへのデジタルツインシステムの応用(8)日本の学生が各国の廃炉活動を学ぶことの意義――。

福島第一廃炉パネルセッションの様子


 ▼その他の廃止措置に関する技術セッション

 米国エネルギー省(DOE)施設/各種原子力施設/原子力発電所のD&D、運転段階から廃止措置への移行、廃棄物の最適化/最小化、リサイクルおよびクリアランスの経験、バーチャルリアリティー(VR)適用を含む革新的技術、技術開発を加速するためのアプローチなど、12セッションが実施された。遠隔装置やデジタル技術を使った施設の状況把握から始まり、除染、そして特別に設計された機器と汎用の機器や技術を組合せて、安全、被ばく低減と効率化を追求しながら実施されており、情報発信し情報共有と意見交換を行うことで、リスク低減や効率化につなげている様子がうかがわれた。

 ▼米国DOE・EMによるホットトピックス紹介

 エネルギー省環境管理局(DOE・EM)は、核兵器開発により汚染された施設・エリア、国立研究所の原子炉・原子力研究施設のクリーンアップを進めるにあたり、WM国際会議を情報共有および人材確保・育成の場として活用してきた。DOEセッションでは、本部のトップリーダー達が、直面している課題について直接紹介し、会場からの質問に丁寧に回答した。

 ▼廃棄物処分

 使用済燃料の直接処分を含む高レベル放射性廃棄物処分は、本会議で最も関心が高いテーマの一つである。米国における使用済燃料と高レベル放射性廃棄物の深地層処分(貯蔵)の検討再開への取り組み、欧州3カ国で進捗がある中で、各国、多国籍、国際プログラムを想定し、新しい概念を含めた処分場構想の現状と計画の報告がなされた。

電気新聞2024年7月29日