◇福島第一廃炉に高い関心/米で第50回大会、学生向け充実

 放射性廃棄物に関する国際会議である第50回WM2024(Waste Management)が3月10~14日に、30カ国から3300人が集まり、米国アリゾナ州フェニックス市で開催された。今回は50年の経験を振り返り、将来に向けた取り組みを議論した。2つの福島第一廃炉パネルセッションを実施し、立席参加者が出るほど高い関心が示された。日本からは大学生、高専生を含めて40名以上の参加があった。今回から3回にわたり、WM2024の結果、日本関連トピックス、次回以降の予定を紹介する。

 ▼会議の全体構成

 会議のテーマとして「50周年を迎える―過去を誇りに思い、未来に向けて」を設定して実施された。会議参加者は図に示すように増加傾向にあり、放射性廃棄物および関連する事項への関心が毎年高まっている様子がうかがえる。

 ▼プレナリーセッション

 米国エネルギー省(DOE)のターク副長官、国際原子力機関(IAEA)のグロッシー事務局長のあいさつに続いて、エネルギー省環境管理局(DOE・EM)のホワイト・シニア・アドバイザー、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)のマグウッド事務局長が、2024年以降の放射性廃棄物管理が直面する問題について講演した。

 ▼技術セッション

 技術セッションは、12の主要分野(トラック)から構成された=

 応募されたアブストラクトは、査読者がレビューし、毎年9月中旬に開催されるプログラム委員会で採否の決定とトラックごとに設定するセッションへの振り分けが行われる。WM2024では、476編の論文が口頭発表された。これに、論文作成がないパネルセッションを加えて、会議全体で235セッションが19会場で実施された。さらに、セッション会場に隣接して、ポスターセッションも行われた。


 ▼展示会場

 世界中の国際機関、研究機関、産業界、学界、ベンチャーなどによる189の展示ブースが設置され、最新技術に関する情報の入手、サプライチェーン構築、人的ネットワーク構築に活用された。

 この展示会場も、民間非営利団体(NPO)であるWMシンポジア(WMS)の取り組みの柱の一つである人材の確保・育成にとって重要な役割を果たしている。放射性廃棄物関連機関・産業の実態を知る情報源になるとともに、学生ポスターセッション、ジョブフェア、STEM(科学・技術・工学・数学)ゾーン、若手専門家ネットワーキングイベントなどが併設され、この業界で働くことを実際に思い描けるよう工夫された内容となった。

 日本からは、東双みらいテクノロジー(デコミ・テック)がブースを出展し、多くの来訪者でにぎわっていた。

展示会場のデコミ・テックのブース
講演するDOE・EMのホワイト・シニア・アドバイザー

 ▼学生プログラム

 会議全体を通して、多くの学生向けのプログラムを用意し、業界の専門家と出会い、廃棄物管理に同じ関心とキャリア目標を持つ世界中の学生とネットワークを築く機会を提供している。

 その中核の一つが、教育支援の「ロイ G.ポスト財団 学生奨学金プログラム」だ。ポスト博士は、WMSを創設した最高責任者であり、彼の学生、同僚、後継者により設立された財団が、奨学金とWM国際会議に参加するための費用を学生に提供している。今年は、7億円以上が用意され、米国に加え英国、ブラジルなどからの学部生と大学院生39人に奨学金
を授与した。

 受賞者は、会議プログラムに顔写真入りで紹介され、会議期間中に多くの参加者との交流を深めていた。放射性廃棄物関連の機関や企業に就職する学生も多く、社会人としてWM国際会議に戻ってくる彼ら彼女らとの再会を喜ぶ様子が多く見受けられた。

 ▼表彰

 毎年、WMとその支援者は、大きな貢献をした個人を表彰し賞を授与している。今年は日本から、原子力発電環境整備機構(NUMO)の梅木博之理事が、ウェンデル・D・ウェアート生涯功績賞を受賞した。

電気新聞2024年7月22日