公開された五井火力発電所1号機(26日、千葉県市原市)

◆JERA、ENEOS、九州電力が参画

 JERA、ENEOS、九州電力がリプレースした五井火力発電所1号機(LNG、千葉県市原市)が、8月1日に営業運転を開始する。世界最高水準の発電効率を誇り、出力は78万キロワット。2、3号機も78万キロワットで、2024年11月、25年3月に順次営業運転を始める予定だ。建設、運転・保守を担う合同会社の持ち分比率に応じ、3基合計でJERAが140万4千キロワット、ENEOSが78万キロワット、九州電力が15万6千キロワット引き取る。卸販売の内外無差別性が問われないENEOS、九州電力にとっては、小売り戦略上重要な電源になる。

(近藤圭一、旭泰世、荻原悠)

(2面に関連記事)

 ◇リスクを分散

 五井のリプレース計画は当初、JERA単独で進めていたが、18年にJXTGエネルギー(当時)、23年に九州電力が参画した。小売り全面自由化などを踏まえた火力事業の不確実性増大、大規模電源開発リスクの高まりなどが要因だ。JERAは、複数事業者によるリスクシェアが必要だと判断。合同会社「五井ユナイテッドジェネレーション」の持ち分を、9対5対1(JERA=約60%、ENEOS=約33.3%、九州電力=約6.7%)で分け合った。

 注目は五井が発電した電力の活用方針だ。JERAは詳細を明らかにしない一方、ENEOSは発販一体会社のENEOSパワーを通じ、最大限活用する意向を強調する。ENEOSパワーは、ウクライナ侵攻後のスポット市場価格急騰に伴い、新規受付停止や値上げを断行。足元では契約数減少に直面している。

 同社の小売り専用の火力はこれまで川崎天然ガス発電所(同社引き取り分=42万1千キロワット)のみだった。香月有佐社長は「供給力と競争力、両方の意味で非常に期待している」と述べ、反転攻勢の切り札に五井を据える。自社電源の厚みが増すことで、電力小売り事業の安定化につながるほか、世界最高水準の効率を誇る五井の価格競争力にも期待する。

 九州電力は九州エリア外の火力に初めて参画した。五井が発電した電力の卸先について当初、九州域外の内外無差別性を考慮するとしたが、電力・ガス取引監視等委員会は、域外需要向けの域外電源は対象外と整理。そのお墨付きを得たことから、九電みらいエナジーなどを通じた電力小売りに活用するとみられる。

 ◇10年来の課題

 九電みらいエナジーは首都圏などで電力小売り参入以来、市場調達で順調に販売量を増やしてきたが、市場価格急騰が直撃。逆ざやに陥った九電みらいエナジーの顧客を、九州電力本体が引き取るといった苦肉の策を講じるしかなかった。

 市場高騰リスクを緩和する首都圏電源への参画は、10年前から九州電力の課題だった。小売り全面自由化を控えた15年3月、20年代中頃の運転開始を目指し、千葉県袖ケ浦市で出光興産、東京ガスと最大200万キロワットの石炭火力を建設すると発表。その後、LNG火力への変更や出光興産撤退などがあり、九州電力としても大規模プロジェクトのリスクを負いきれず撤退した。

 今回は一定程度進んだプロジェクトに小規模参画することでリスクを軽減するとともに、九州電力のLNGを五井向けに供給する仕掛けを盛り込んだ。LNG活用先の柔軟性向上にも役立てる方針。五井の営業運転開始で九州電力は、首都圏での小売り事業を健全に営む上での土台を手に入れた格好だ。

電気新聞2024年7月29日