Jパワー(電源開発)は21日、水力発電所の保守高度化に向けて、設備異常の兆候を検知するAI(人工知能)を導入すると発表した。約3年かけて同社の全61地点に展開する見込み。一部の発電所では巡視ロボットも導入する。発電所の安定稼働や労働環境の改善、保守業務の省力化、競争力向上につなげる。
設備異常の兆候を検知するAI「JPプレディクト」は2021年から自社で独自開発してきた。水車発電機などに取り付けたセンサーで得られたデータから、設備異常の兆候を検知・通知する仕組み。設備トラブルを未然に防止することで、安定稼働につなげる。
巡視ロボットは車輪移動型と四足歩行型の2種類を導入する。車輪移動ロボットは、ドローンやロボットによる点検ソリューションを手掛けるブルーイノベーション(東京都文京区、熊田貴之社長)と共同開発。重点点検範囲を巡視して、保安業務の省力化を目指す。
四足歩行ロボット「ANYmal(アニマル)」は、スイスのエニーボティクスが製造した。災害時など足場が悪い場所でも行動できるのが特徴。水力発電所に導入するのは日本初で、導入コストも踏まえながら点検業務の最適化に取り組む。
その他、米スペースXの衛星通信網「スターリンク」を活用した高速・大容量通信も導入する。光ファイバーの引き込みが困難で、携帯電話の電波の届かない奥深い山間部でも、発電設備に取り付けるセンサーや点検タブレット、監視カメラなどIoT機器が使いやすくなる。
Jパワーは19年度から下郷発電所(福島県下郷町、揚水式、100万キロワット)を「デジタル集積戦略特別区域」として指定し、同発電所内でデジタル技術の実証実験に取り組んできた。24年度からはそれらの成果を全国の水力発電所に展開し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する考えだ。
電気新聞2024年5月22日
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