事故対応に当たった5人の所員が思いを語るコーナー「あの日、3・11から」
事故対応に当たった5人の所員が思いを語るコーナー「あの日、3・11から」

 東京電力ホールディングス(HD)の「東京電力廃炉資料館」(福島県富岡町)が11月30日に開館した。福島第一原子力発電所事故の記録と記憶、その反省と教訓、廃炉事業の現状を社内外に広く発信する場として活用。地元住民の不安を減らし、避難者の帰還を促す効果が期待される。「旧エネルギー館」を改装しており、再利用した設備も少なくない。年間2万人以上の来館を目指す。

 2階では、拡張現実(AR)などによって事故の経緯を振り返る。津波で全電源を喪失した1、2号機中央制御室の様子を再現した映像からは、最前線で対応した運転員の緊迫感や焦燥感が伝わってくる。

事故当時の1、2号機中央制御室を再現映像で振り返るコーナーも
事故当時の1、2号機中央制御室を再現映像で振り返るコーナーも

 反省と教訓に関しては、「人知の限りを尽くした事前の備えによって防ぐべき事故を防ぐことができなかった」という事実に正面から向き合い、安全に廃炉を進める決意を強調。現場で事故対応した社員5人が“語り部”として、自らの体験や思いを述べている。

 1階では、廃炉事業の全体像と現状を詳しく紹介。「エフ・キューブ」と呼ばれる大型ビジョンが構内各地を映し出し、見学に近い体験ができる。汚染水対策、燃料・燃料デブリ取り出しの取り組みを説明するコーナーには、作業方法などを検討する際に使用したジオラマや模型が展示されている。

 廃炉のために開発されたロボット、現場の安全装備、労働環境改善の進展について、現場のイメージが湧くような展示物もある。

現場の今を伝える展示も
現場の今を伝える展示も

 
 嶋津康館長は「当事者として事故の記憶と記録を後世に伝え、廃炉事業について分かりやすく説明し、少しでも皆さまの安心につなげたい」と話している。

電気新聞2018年11月30日