2018年は、新電力との競争に加えて、大手電力同士の本格競争が進んだ。その一方で、台風や地震などの自然災害が相次いだことを踏まえ、電力インフラの強靱性(レジリエンス)の重要性があらためて認識された。原子力では関西電力大飯発電所3、4号機、九州電力玄海原子力発電所3、4号機の4基が復帰し、再稼働を果たした原子力プラントは9基となった。また、7月には第5次エネルギー基本計画が閣議決定されたほか、新たな市場・制度の詳細設計も進んだ。2019年は2020年4月の発送電分離(送配電部門の法的分離)を控えた最後の準備期間。今後、本格競争と安定供給を両立する仕組み作りが求められる。
 

大雪、厳寒で東京の電力需給が逼迫

降雪などで交通網などが混乱した東京都心(22日、東京都千代田区)
1月下旬から2月上旬にかけて、東京電力パワーグリッド(PG)エリアで大雪や寒波による需給逼迫が生じた。電力広域的運営推進機関(広域機関)を通じた融通が23日から4日連続で行われた。写真は降雪などで交通網などが混乱した東京都心(1月22日、東京都千代田区)

 

中部電力と大阪ガスが首都圏販売会社を設立するなど競争が激化

中部電力と大阪ガスは2月27日、首都圏で電力やガスを販売する新会社「CDエナジーダイレクト」を4月2日付で設立すると発表した。2018年はこうした大型提携が相次ぎ、競争が激化していった。写真は、新会社の社名を手にする中部電力の勝野哲社長(左)と大ガスの本荘武宏社長(27日、東京・丸の内)
中部電力と大阪ガスは2月27日、首都圏で電力やガスを販売する新会社「CDエナジーダイレクト」を4月2日付で設立すると発表した。2018年はこうした大型提携が相次ぎ、競争が激化していった。写真は、新会社の社名を手にする中部電力の勝野哲社長(左)と大ガスの本荘武宏社長(2月27日、東京・丸の内)

 

再エネ主力電源化を盛り込んだ第5次エネルギー基本計画

エネルギー情勢懇談会は、2050年の長期視点からエネルギー戦略について提言。これを受けてを行った(4月10日、東京・霞が関)
エネルギー情勢懇談会は、2050年の長期視点からエネルギー戦略について提言。総合資源エネルギー調査会基本政策分科会が5月16日の会合で素案を了承。パブリックコメントなどを経て、7月3日に閣議決定された。(写真は4月10日に開催されたエネルギー情勢懇談会=東京・霞が関)

 

東電HD、福島第二の廃炉方針を発表

 ◇福島第二、廃炉方針を表明  東京電力ホールディングス(HD)の小早川智明社長(中央)は6月14日、福島県庁で内堀雅彦知事(左)と会談し、福島第二原子力発電所について「全号機廃炉の方向で具体的に検討したい」と伝えた。福島第二の廃炉は、これまで内堀知事や県議会など地元から繰り返し要請され、同日の会談でも知事から強い要請を受けたことに応えた
東京電力ホールディングス(HD)の小早川智明社長(中央)は6月14日、福島県庁で内堀雅彦知事(左)と会談し、福島第二原子力発電所について「全号機廃炉の方向で具体的に検討したい」と伝えた。福島第二の廃炉は、これまで内堀知事や県議会など地元から繰り返し要請され、同日の会談でも知事から強い要請を受けたことに応えた

 

原子力産業界の新組織、原子力エネルギー協議会(ATENA)発足

 ◇ATENA発足  原子力産業界は発電所の安全性をより高い水準に引き上げる目的で、新たな組織「原子力エネルギー協議会」(ATENA)を7月1日に設立した。発電事業者、プラントメーカー、関係機関など原子力産業界全体が関わり、共通課題に取り組む。写真は6月15日に行われた設立会見(東京・大手町)
原子力産業界は発電所の安全性をより高い水準に引き上げる目的で、新たな組織「原子力エネルギー協議会」(ATENA)を7月1日に設立した。発電事業者、プラントメーカー、関係機関など原子力産業界全体が関わり、共通課題に取り組む。写真は6月15日に行われた設立会見(東京・大手町)

 

原子力発電所の運転再開相次ぐ

 ◇運転再開  2018年は関西電力大飯発電所3、4号機、九州電力玄海原子力発電所3、4号機が復帰を果たした。また17年12月に四国電力伊方発電所3号機の差し止め仮処分を命じた広島高等裁判所決定の異議審では、同高裁が今年9月、四国電力の主張を認め命令を取り消した。写真は、中央制御室で玄海原子力発電所4号機の発送電開始作業を行う運転員ら(6月19日、代表撮影)
2018年は関西電力大飯発電所3、4号機、九州電力玄海原子力発電所3、4号機が復帰を果たした。また17年12月に四国電力伊方発電所3号機の差し止め仮処分を命じた広島高等裁判所決定の異議審では、同高裁が今年9月、四国電力の主張を認め命令を取り消した。写真は、中央制御室で玄海原子力発電所4号機の発送電開始作業を行う運転員ら(6月19日、代表撮影)

 

米国シェールガスの受け入れを開始

 ◇コーブポイントから初受け入れ  国内初となる米国シェールガス由来の長期契約LNG(液化天然ガス)の受け入れが行われた。米国メリーランド州コーブポイントプロジェクトからのLNGを、東京ガスが5月21日、関西電力が7月6日にそれぞれが初めて受け入れた。写真は7月6日、堺LNGセンターに着桟した関西電力のLNG輸送船(堺市)
国内初となる米国シェールガス由来の長期契約LNG(液化天然ガス)の受け入れが行われた。米国メリーランド州コーブポイントプロジェクトからのLNGを、東京ガスが5月21日、関西電力が7月6日にそれぞれが初めて受け入れた。写真は7月6日、堺LNGセンターに着桟した関西電力のLNG輸送船(堺市)

 

西日本豪雨

 ◇西日本豪雨  7月上旬、台風7号と梅雨前線による大雨によって、中国・四国地方では河川氾濫や土砂崩れが発生した。中国電力・四国電力エリアでは変電所などが浸水被害に遭うなどし、懸命な復旧作業が行われた。写真は、濁流の中ロープを伝って道路を渡る救助隊(広島市、7月8日)
7月上旬、台風7号と梅雨前線による大雨によって、中国・四国地方では河川氾濫や土砂崩れが発生した。中国電力・四国電力エリアでは変電所などが浸水被害に遭うなどし、懸命な復旧作業が行われた。写真は、濁流の中ロープを伝って道路を渡る救助隊(広島市、7月8日)

 

酷暑、そして需給逼迫

 ◇酷暑  今夏は国内の観測史上最高気温を記録した。東・西日本で平均気温がかなり高くなるなど、40度近い猛暑日が続いた。気象庁は「災害級の暑さ」だとし警戒を呼びかけた。空調機器の高稼働などによって予想を上回る電力需要を記録した。写真は、国内最高気温を記録した埼玉県熊谷市の様子(7月23日)
今夏は国内の観測史上最高気温を記録した。東・西日本で平均気温がかなり高くなるなど、40度近い猛暑日が続いた。気象庁は「災害級の暑さ」だとし警戒を呼びかけた。空調機器の高稼働などによって予想を上回る電力需要を記録した。写真は、国内最高気温を記録した埼玉県熊谷市の様子(7月23日)

 

Jヴィレッジ「再始動」

 ◇Jヴィレッジ「再始動」  日本初のサッカーナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町・広野町)が7月28日、7年4カ月ぶりに営業を再開した。東日本大震災後、東京電力福島第一原子力発電所事故の対応拠点となったが、芝を張り替えるなど環境を整えた。写真は、同日の記念式典で行われたエキシビジョンマッチ
日本初のサッカーナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町・広野町)が7月28日、7年4カ月ぶりに営業を再開した。東日本大震災後、東京電力福島第一原子力発電所事故の対応拠点となったが、芝を張り替えるなど環境を整えた。写真は、同日の記念式典で行われたエキシビジョンマッチ

 

相次ぐ台風

 ◇台風  9月の台風21号と24号は、中部・近畿地方を中心に甚大な被害をもたらした。21号では関西電力エリアで延べ停電件数が約225万8000戸に達し、阪神・淡路大震災による約260万戸に迫った。24号では、中部電力エリアで延べ約119万戸が停電。平成以降では最大の被害規模となった。写真は、台風21号の影響で倒壊した電柱を調べる関西電力の作業員(9月6日、大阪府泉南市)
9月の台風21号と24号は、中部・近畿地方を中心に甚大な被害をもたらした。21号では関西電力エリアで延べ停電件数が約225万8000戸に達し、阪神・淡路大震災による約260万戸に迫った。24号では、中部電力エリアで延べ約119万戸が停電。平成以降では最大の被害規模となった。写真は、台風21号の影響で倒壊した電柱を調べる関西電力の作業員(9月6日、大阪府泉南市)

 

最大震度7の地震と北海道全域停電

 ◇北海道胆振東部地震  9月6日未明、最大震度7の北海道胆振東部地震が北海道を襲い、エリア全域の大規模停電(ブラックアウト)が国内で初めて発生した。北海道全域の約295万戸が停電。水力や火力の発電所を順次起動させるとともに、節電要請を行い、約45時間後にほぼ停電は解消した。写真は停電した札幌市内(6日未明)
9月6日未明、最大震度7の北海道胆振東部地震が北海道を襲い、エリア全域の大規模停電(ブラックアウト)が国内で初めて発生した。北海道全域の約295万戸が停電。水力や火力の発電所を順次起動させるとともに、節電要請を行い、約45時間後にほぼ停電は解消した。写真は停電した札幌市内(6日未明)

 

応援

電力需給の逼迫が続く中、全国各地の電力会社から高圧発電機車が続々と終結した。台風21号による被害の大きかった関西電力を除く、電力8社が応援に駆けつけた。(写真左上から時計回りに)海路で北海道に入った北陸電力の災害復旧応援車(苫小牧市)。苫小牧エリアに配備された中国電力の移動発電機車。苫小牧エリアで活躍する中部電力の発電機車。小樽変電所で現近確認を行う沖縄電力の応援部隊
地震による苫東厚真発電所の停止で北海道の電力需給逼迫が続く中、全国各地の電力会社から高圧発電機車が続々と終結した。台風21号による被害の大きかった関西電力を除く、電力8社が応援に駆けつけた。西日本豪雨や台風21号などの際も他電力から応援が送られた。(写真左上から時計回りに)海路で北海道に入った北陸電力の災害復旧応援車(苫小牧市)。苫小牧エリアに配備された中国電力の移動発電機車。苫小牧エリアで活躍する中部電力の発電機車。小樽変電所で現近確認を行う沖縄電力の応援部隊

 

東北電力、女川1号を廃止

 ◇女川1号を廃止  東北電力は10月25日、女川原子力発電所1号機の廃止を決定した。同日午後、原田宏哉社長(右)が宮城県の村井嘉浩知事(左)と県庁で会談し報告した。原田社長は会談の中で「技術的な制約や再稼働した場合の運転年数などを総合的に勘案した」と廃止決定の理由を説明した(仙台市)
東北電力は10月25日、女川原子力発電所1号機の廃止を決定した。同日午後、原田宏哉社長(右)が宮城県の村井嘉浩知事(左)と県庁で会談し報告した。原田社長は会談の中で「技術的な制約や再稼働した場合の運転年数などを総合的に勘案した」と廃止決定の理由を説明した(仙台市)

 

原子力規制委が東海第二の運転延長を認可

 ◇東海第二の運転延長を認可  原子力規制委員会は11月7日、日本原子力発電東海第二発電所の運転期間延長を認可した。同日、原電の和智信隆副社長(左)が規制庁で認可書を受け取った。原子炉等規正法で「40年運転制限」が定められて以降、運転期間延長が認められるのは、BWR(沸騰水型軽水炉)、東日本大震災による被災プラントでは初(東京・六本木)
原子力規制委員会は11月7日、日本原子力発電東海第二発電所の運転期間延長を認可した。同日、原電の和智信隆副社長(左)が規制庁で認可書を受け取った。原子炉等規正法で「40年運転制限」が定められて以降、運転期間延長が認められるのは、BWR(沸騰水型軽水炉)、東日本大震災による被災プラントでは初(東京・六本木)

 

北陸電力の富山新港LNGが運開

 ◇富山新港LNGが運開  北陸電力の富山新港火力発電所LNG1号機が11月21日、営業運転を開始した。同社初のLNG(液化天然ガス)コンバインドサイクル発電で、火力発電所としては約18年ぶりの新設。発電端熱効率は59%超(低位発熱量基準)と、同社火力ユニットで最高効率を達成した(富山県射水市)
北陸電力の富山新港火力発電所LNG1号機が11月21日、営業運転を開始した。同社初のLNG(液化天然ガス)コンバインドサイクル発電で、火力発電所としては約18年ぶりの新設。発電端熱効率は59%超(低位発熱量基準)と、同社火力ユニットで最高効率を達成した(富山県射水市)

 

中国電力女子卓球部、創部28年目で年間日本一に

 ◇創部28年目の快挙  中国電力女子卓球部は12月2日、高崎アリーナ(群馬県高崎市)で開催された内閣総理大臣杯日本卓球リーグプレーオフ(JTTLファイナル4)で初優勝し、実業団チームの年間チャンピオンに輝いた。中国電力女子卓球部は1991年の創部から28年目で実業団女王のタイトルを手にした
中国電力女子卓球部は12月2日、高崎アリーナ(群馬県高崎市)で開催された内閣総理大臣杯日本卓球リーグプレーオフ(JTTLファイナル4)で初優勝し、実業団チームの年間チャンピオンに輝いた。中国電力女子卓球部は1991年の創部から28年目で実業団女王のタイトルを手にした

 

2025年、大阪・関西万博の開催決定

 ◇「大阪・関西万博」開催決定  11月24日未明、2025年国際博覧会(万博)の大阪・関西での開催が決まった。パリで開かれた博覧会国際事務局(BIE)総会の加盟国の投票で決定した。日本としては3度目の大規模な万博開催。大阪市内のビューイング会場には関係者300人以上が集結。決定の瞬間には、大きな歓声が上がった
11月24日未明、2025年国際博覧会(万博)の大阪・関西での開催が決まった。パリで開かれた博覧会国際事務局(BIE)総会の加盟国の投票で決定した。日本としては3度目の大規模な万博開催。大阪市内のビューイング会場には関係者300人以上が集結。決定の瞬間には、大きな歓声が上がった

 
電気新聞2018年12月28日