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 生産現場では、機器の長期稼働による故障リスクの高まり、保守コストの増大、保守技能・ノウハウの伝承など多くの課題を抱えている。日立パワーソリューションズは、「構造化情報一元管理技術(SIMT)」を活用し、設備や機器のあらゆる情報から保守に必要とする情報を一元管理するナレッジベース保守支援ソリューション「サイトリミックス」を、2018年5月から提供開始した。
図_SIMTの仕組み_4c
 

ナレッジベース構築で、現場から経営まで、必要な情報を見える化

 
 「サイトリミックス」の基盤技術である「構造化情報一元管理技術(SIMT)」は、異なる設備や機器、管理システムなどの各種データにID(識別子)を付けて整理し、かつ構造化するもの。保守業務に必要な現場データはもとより、関連する情報を同一の通信チャネルの下で「ひも付け(相関付け)」した上で集約・蓄積し、ナレッジベースを構築する。

 「サイトリミックス」は、故障リスクを高精度に分析する予兆診断システム「HiPAMPS」をはじめ、保守部品管理システムの在庫管理データ、工程管理システム、設備運転情報、ユーザーサイトでの故障対応やメンテナンスなど保守来歴データ(設備カルテ)などをクラウド(データセンター)上で一元管理する。このナレッジベースを共有・活用することで、現場の保守作業者から設備管理者、さらには経営サイドにわたって、必要な情報を必要な形に「見える化」してリアルタイムで提供することができる。

 特筆されるのは、従来、データ化が困難だったアナログメーターの数値や、制御盤の警報ランプの色なども、ネットワークカメラの撮影データを画像解析して自動的にデジタルデータとして取り込めることや作業手順書、点検記録などの手書き文書や図面とともにリアルタイムに提供できることだ。
 

CADや手順書、点検作業履歴などの蓄積、共有、再利用が可能

 
 「サイトリミックス」の活用により、「HiPAMPS」による故障予兆診断結果と、過去の発生事象との因果関係を比較して行う原因の検証を迅速化することができる。故障する前に部品交換を行うなど、保守対応時の意思決定のスピードアップに貢献できる。

 日常の保守業務においても、回転機器を使用した設備の場合、機器の振動・温度などのデータを常時収集し、「HiPAMPS―Edge」の診断結果や、クラウドに蓄積された関連情報を「見える化」して設備管理担当者や現場関係者に提供することで、業務の効率化を図ることができる。さらに、24時間監視を行う当社の遠隔監視・支援センターとも情報を共有することで、いっそう迅速・的確な保守を行える。

 特に、保守の現場では、紙の点検リストによるチェックでは作業者の負担が大きく、管理者が現場状況をリアルタイムで把握するのも困難であった。「サイトリミックス」は保守に必要なCADデータや手順書、点検作業履歴などの蓄積、共有、再利用が可能であり、これらを使って保守作業者は的確に点検が行える。管理者にとっても現場をリアルタイムで把握できるので、保守作業者との緊密な連携の下で効率的な運転や保守を実施可能だ。

 経営部門においても、「サイトリミックス」を通じて、故障時の復旧工程、費用、人員を含めた対応内容などの「処方箋」情報を得られるため、価値最大化につながる施策を迅速に進めることができる。

【用語解説】
◆構造化情報一元管理技術(SIMT)
Structured Identifier Management Technology。特許第4758214号。

◆通信チャネル
コンピューター上で論理的に構築した情報伝達の経路。

◆ナレッジベース
経験や知識をコンピューター上で蓄積したデータベース。

◆HiPAMPS―Edge
エッジコンピューティング環境で設備の想定外停止の予兆をリアルタイムに診断するシステム。

電気新聞2018年10月15日