AGCは、4月1日出荷分から、六フッ化硫黄(SF6)ガスを現行価格から90%以上値上げする。SF6はガス絶縁開閉装置(GIS)や変圧器の絶縁のほか、半導体の製造工程に使われる。SF6は温暖化係数が高いため、直近約25年間で国内需要が8割以上減少した。AGCはSF6事業が赤字に陥る中、代替技術が確立されるまでインフラに不可欠なSF6の供給を継続するため、値上げに踏み切る格好だ。
SF6は絶縁性能に優れ、設備をコンパクトにできる利点もあり電力業界で普及している。一方で温暖化係数は二酸化炭素(CO2)の2万3900倍と高く、電力業界は脱炭素化へ代替技術の開発を進めている。
1997年に京都議定書が採択されてから、機器使用時の漏えい対策も進んだ。経済産業省の産業構造審議会のフロン類等対策ワーキングによると、電気機器の絶縁向けのSF6ガス購入量は95年に1380トンあったが、2021年は255トンまで減少した。
AGCは70年代からSF6ガスを供給してきた。近年は需要の減少に伴い採算性が悪化し、自助努力を重ねてきたが、市場の縮小による赤字は避けられなかった。AGCによると、国内のSF6メーカーは同社と関東電化工業の2社で、AGCは重電メーカーの顧客網に強みを持つ。事業継続できないと日本の電力インフラ維持に支障を及ぼすとし、値上げを決断した。
同社によると高圧ガスに当たるSF6は輸送時の取り扱いが難しく、輸入に切り替えるハードルが高い。また、輸入する際は商社などの仲介がほぼ必須とみられるが、日本国内で需要が縮小する中、参入するプレーヤーがいるかも課題とされる。
電気新聞2024年3月1日
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