東京電力エナジーパートナー(EP)は7日と15日の2日間、国内初の上げDR(デマンドレスポンス)を実施した。太陽光発電の出力増加が見込める一方で電力需要が少ない時間帯に、電力使用量を増やしてもらうよう顧客に要請する。今回は実証を目的として、素材系3社の工場で行い、2万5千キロワット分の需要を増やした。将来、需給調整市場でDRの権利が売買されることも踏まえ、上げDRに伴う課題などを洗い出す。

 7日午後1~4時、化学や鉄鋼など3社の工場で、上げDRを実施。15日も同じ企業を対象に行った。7日は初の実施となったが、計画通りに2万5千キロワット分の需要を追加し、余剰電力を吸収した。

 上げDRに対応すると、契約電力を超過する場合があるほか、昼間の電気を使うことが多くなり、相対的に割安な夜間の電気の使用量が減る。今回は、報奨金という形でそれらを補填した。

 上げDRは工場の稼働を引き上げる必要があり、製造物の貯蔵・保管場所や出荷スケジュールなどにも影響を及ぼす。そのため、下げDRよりも参加できる業種や規模などの制約が多い。

 2021年度に開設される需給調整市場では、DRを上げ下げする権利が売買されることになる。東電EPは先行して上げDRに取り組み、課題を検証する。下げDRは今夏に違う企業を対象に5回実施した。

 上げDRは11月に5回、実証する計画。実務はエナジープールジャパン(東京都港区、市村健社長)に委託している。実証の結果をみて、来年度以降の実施を検討する。東電EPでは、数十万キロワットレベルでの実施も可能とみている。

 太陽光発電の導入が進む中、太陽光の電気を電力需要の端境期にどう吸収するかは喫緊の課題だ。九州では、太陽光発電の出力を抑制することで需給バランスを保った。上げDRが確立すれば、再生可能エネルギーをより有効活用できる。

 ただ、上げDRを電気料金にどう落とし込むかなど、制度面での問題は残っている。ピークカットの概念と相反するため、省エネルギー法で適切に勘案していく仕組みも整備する必要がある。

電気新聞2018年11月16日